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魔法少女リリカルなのはStrikerS 〜賢者の槍を持ちし者〜
Chapter23「つながる歯車」
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剣で槍がヒットするのをギリギリで防ぐがその勢いを消し去る事はできない。


「マター・デストラクト!」


世界さえ呑み込む巨大な賢者の槍がエルツーの双剣を跡形なく消滅させ、凄まじい衝撃でエルツーは反対側の壁に激突。

同時に骸殻が解除される。

「うぅ……っ!?」

「動くな。この槍には非殺傷設定なんて優しい機能は施されてはいない。当たればただではなすまないぞ」

カストール、クランズオート、クランズウェイトは六課技術スタッフが技術の粋を集め、デバイスでもない武器に非殺傷設定を施す事に成功、見事実用化に至っている。しかし、骸殻ばかりは精霊の力という魔導の世界では未知の領域のため非殺傷設定を施す事は流石に不可能だった。

「は、はは……結局私は越えられなかったって事ですね……」

「越えられなかった?」

向けられた槍等見えていないと言うかのように、背中を預けていた壁から力なく立ち上がり力なく笑う。

「私はお兄様にも負け、“私自身”にも負けたって事です…よっ!」

「うっ!?」

地面の砂をルドガーの目元めがけて蹴り、ルドガーの視界を一時的に奪ったエルツーはバク宙で距離を取り、黒い歯車を組み合わせた物体を取り出し、握り潰し粉々にする。
そして彼女の表情を見たルドガーは、その翠色の瞳から流れる涙を見て驚くと共に、自らに憤りを覚えていた。それは大切な人を、愛する人を悲しませた事に対しての、不甲斐ない自分への憤り……自分を女性にしたような容姿を持つエルツーに何故このような感情を抱いているのか自分自身を理解ができない。そんなルドガーを余所に状況は移り変わって行く。

「あ、ああ……アアアアアア!!」

胸を抑えながら苦悶の咆哮をあげるエルツーの全身は黒く渦々しく変色をとげ、それは内部からエルツーを侵食しようとする。時歪の因子化……一族の力を限度以上に使用した者の成れの果て。
エルツーが骸殻能力者で力を使い続ければいつかは起こっていた事……だがルドガーはエルツーの時歪の因子化に違和感を覚えていた。

「ひっ!?」

「な、なんや……いったい何が起こってるんや!?」

時歪の因子化を目の当たりにしたスバルが、肌が因子化によって黒ずんでゆくエルツーを見て小さい悲鳴を漏らし、魔導師として数々の戦いを経験したはやて達ですら状況が全く把握できずいる。
咆哮を上げ苦しみ続け、やがてエルツーは完全に時歪の因子化し消滅する。彼女の持っていた碧色の懐中時計も、彼女と共に消滅した。


“さよなら……お兄様……そしてまた戦いましょう……”


「……嫌だよ」

夜空を見上げながら、消滅する直前にエルツーが口にした事へ正直な感想を冷め口調で話す。
冷たい奴だと罵られてもこんな戦いは二度とごめん
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