暁 〜小説投稿サイト〜
錬金の勇者
1『ヘルメス・トリメギストス』
[3/3]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話
イヤーは君ではなかったのかい?」

 そのゲームの名を出した時、水門の体がピクリと動いた。

 《バトルロイヤリティ・アーケード》は《ナーヴギア》用に作られたアクションゲームだ。路地裏でのストリートファイト形式をとったゲームで、《ソードアート・オンライン》発表前はナーヴギア用ソフト中最高と言われたほどだった。

「世界大会三度連続優勝、最優秀プレイヤー賞受賞。それだけでなく、それまでのナーヴギア用ソフトでも圧倒的な成績を残している」
「……人違いじゃないのか」
「いいや?私の元には『全て』の監視システムがある。そこには、間違いなくプレイヤーネーム《Hermes》は君だと記されていたが?」

 いじわるな笑みを浮かべた茅場を水門はもうひとにらみすると、はぁー、と盛大にため息をついた。

「わかったよ。完敗だ。……で、僕になにをさせようというんだ?《ソードアート・オンライン》を買うつもりは無いのだが」
「ほう、君ほどの人間がSAOに興味がないとは驚きだったね」
「いや……興味がないわけじゃないさ。ただ、もうゲームで自分の実力を示すのも限界があるかな、と思っただけだ」

 水門の自嘲気味な笑み。茅場はそんな彼に優しく話しかける。

「喜べ少年。君の望みはようやく叶う」
「……何?」

 茅場は一枚のディスクを取り出した。

「それは……ナーヴギア用ゲームソフトか?」
「いかにも。ここに入っているのは、私直々に改造を施した《ソードアート・オンライン》のソフトウェアだ」
「……!!」

 茅場は少年が話に喰いついたのを確信し、内心でよし、と呟いた。

「《ソードアート・オンライン》……あの世界は、ゲームであって遊びではない。あの世界で命が尽きれば、実際の命も尽きる」
「!?」
「だが、あの浮遊城でなら、君の望みはかなう。誰よりも強くありたい、と言う」
「何故、それを!?」
「誰でも気付くさ。……このSAOソフトには、君が望みをかなえるために必要なすべてがある。ただし甘くはない。君は死の危険性が誰よりも高くなる。代わりに君は、他のプレイヤーを超える力を手に入れる。私はね。水門君。自分の創った世界と、本物の魔術が融合するのを見てみたいのだよ」

 茅場が言う。

 しかし水門は薄ら笑いを浮かべていた。

「命を懸けて戦う?面白い。僕は常に死と隣り合わせだ。今更怖くなんてないね」
「そうか。……引き受けてくれるね」
「ああ」

 茅場はにやりと笑うと、「では、正式サービス開始の日にここに来てくれ」と一枚の紙を渡すと、それまでに設定をしておくようにと、ソフトを渡した。
[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ