1『ヘルメス・トリメギストス』
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のだから、同じ道をたどったはずだ」
「ふむ、違いないな……」
再び老獪は履々と笑う。
「で?何の用だ。《賢者の石》はわたさぬぞ」
「無論だ。私はそのような怪異を求めてはいない。――――お孫さんをお借りしたい」
「ほほう?儂の孫、とな。どれのことを言っておるのかな?」
「とぼけるな。あなたの自慢のお孫さん……ヘルメス・トリメギストス百二十七世のことだ」
しばらく呆けたように沈黙した老獪は、直後防波堤が決壊した様に笑い始めた。
「かかかかかかか!!百二十七世!!貴様もまた難儀な奴を選ぶのう。あのギルバートめが異国の女に孕ませたできそこないを!!自慢とな!?からかいの種にもほどがあるわい!!かかかかか!!かかかかかかかか!!」
ひーっ、ひーっと、しばらく腹を押さえて笑い転げていた老獪は、気を取り直したように笑いをひそめると、いまだその残滓が残る震え声で言った。
「よかろう。貸し与えようぞ、あのできそこないを」
*+*+*+*
琴音水門。またの名をヘルメス・トリメギストス百二十七世。
2007年、トリメギストス家の末弟ヘルメス・トリメギストス百十世ことギルバート・トリメギストスと、日本人女性琴音春世の間に生まれる。幼少期より母の手で育てられるも、八歳の時にトリメギストス本家へ引き取られる。その後錬金術を学ぶも、一向に素養を見せず、一族から「できそこない」と揶揄される――――
「なるほど。妾の子か」
「母さんを妾と言うな」
茅場晶彦の呟きに鋭く言い返したのは、眼前に立つ黒銀色の髪の少年だった。彼こそが茅場の探し求めた少年、琴音水門だ。
水門は茅場を睨み付けると、茅場が視線を逸らすまでにらみ続けた。
「すまなかったね。……水門君であっているね?」
「そうだ。……あんた、僕に何の用だ」
水門は鋭い目でもう一度茅場を睨んだ。
「そんな怖い顔をしないでくれたまえ。私は君の力を借りたいだけだ」
「……僕の力?なんだ、錬金術でもしてほしいのか?だったら僕より上手な奴など腐るほどいる。見習いですら僕より素養があるよ」
「そうかね?私はそうは思わないが……まぁいい。今回私は、君に《ソードアート・オンライン》のプレイヤーになってもらうために声をかけた」
水門は怪訝そうな表情を浮かべた。彼も茅場晶彦の名を知っていただけあって、《ソードアート・オンライン》に関して無知なわけではないようだ。
「……テスターになれ、とでもいうのか」
「いいや。βテスト期間はすでに終了した。知っているだろう?」
「……いや。悪いが、僕はそこまでゲーム事情に詳しくないのでね」
「ほう?ならば私の聞いた《バトルロイヤリティ・アーケード》最優秀プレ
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