違うって
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緒方がラーメンをすする姿は全く雰囲気に合っていない。ヒカルは奇妙な感覚になるのを抑えて自分のラーメンに集中した。店内は緒方とヒカルの他に二組のカップルが来ていて、それぞれ自分たちの会話に夢中になっている。五分後にはヒカル達の頼んだラーメンがテーブルに置かれた。簡単な近況を話し、緒方は一息ついてからこう言った。
「先生がこの前藤原さんのユーザー名を聞いてきたんだ。それを教えた次の日にはもう対局していた」
「へえ」
ヒカルは空返事をしてナルトを取って咀嚼した。正直言って、あまり緒方と佐為について話したくなかった。緒方はsaiについてかなりの興味を持っているし、ネット碁のことを話すとなると、自分の不自然な反応が現れてしまわないか心配だったこともある。そしてもう一つ。
「それで、俺が聞きたいのは・・・藤原さんは一体何者なんだ」
緒方は真剣な瞳を射るようにヒカルに向け、本題を話し始めた。その質問にヒカルはドキマギして思わず箸を持つ手を止めてしまう。
「何者って、どういう意味だよ」
「お前も見ただろう。そのままの意味だ。芦原との指導碁から三か月。この短期間であれほど強くなれるはずがない」
緒方と話したくなかった理由の一つがこれだった。佐為の成長度ははっきり言って異常だった。一週間に最低一度は指導碁をしていたが、会うたびに強くなっている佐為がいた。しかし、それほど驚きはしなかった。何故か佐為は自然とこのように強くなっていく気がしていたからだ。淡々と佐為の成長度に感服しながら、今まで何も言わず指導してきた。
「あれはもうアマの域を超えている。プロでも充分通用するだろう。お前、最近の指導碁の置石はいくつだ」
「・・・一子」
絞り出した言葉に、緒方は驚く様子もなく「そうだろうな」と返した。
「それで、負けるのか。勝つのか」
「勝つに決まってるじゃん」
これだけは言わせてもらう。ヒカルはそう言わんばかりに声を大きくして答えた。これで「負ける」と言ったら緒方がどう来るか。ヒカルは想像したくなくて眉間に皺を寄せた。緒方の表情は変わらなかった。
「藤原・・・佐為か。一年ちょっと前を思い出すな」
toya koyo vs sai。緒方が内容を言わずとも頭にすぐ浮かんできた。あの後すぐ、佐為が消えた。自分にとってはあまり思い出したくない対局だった。たった三局しか叶わなかった塔矢行洋との対局。ヒカルが何も言わないのを確認すると、緒方は先を続けた。
「俺がお前に掴みかかったのを覚えているか」
それも思い出したくない記憶だった。
「覚えてるよ」
店内にもう一組やってきたのでヒカルは彼らに視線を泳がせる。もう緒方と話をしたくなくて、思わず苛立った口調になってしまった。緒方
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