暁 〜小説投稿サイト〜
センゴク恋姫記
第2幕 曹孟徳
[1/7]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
「半兵衛様っ!」

 自身の叫ぶ声で、目を開く。
 だが、その眼差しの先にあるのは青空。

(空……空じゃと?)

 そのことに気づいたゴンベエが、体を起こす。
 そして周囲を見て呟く。

「どこじゃ、ここは……」

 見たこともない森の畔。
 目の前には小さな小川。

 遠くに見える山々は、見たこともないような禿山で、地平線の先まで見える大地は乾燥した不毛な地。

 木と水に溢れた日ノ本の大地とはまるで違うことに、ゴンベエは急に孤独感に襲われる。

「あら……やっと目が覚めたのね」

 不意に声がした。
 慌てて振り向くと――

「随分高いびきで寝ていたけど……私が盗賊だったら、貴方死んでいるわよ?」

 見たこともない美少女が、草むらに座り込んで、こちらを覗きこんでいる。
 ゴンベエは、その少女の容姿に、思わず見惚れてしまった。

(髪が金色……南蛮人か? 幼子のようじゃが……おかずよりええ器量じゃの)

 自分の娘――養女だが――より見目麗しい少女に、一瞬我を忘れる。
 だが、瞬時に自分の妻の恨みがましい眼を思い出し、ぶんぶんと首を振るった。

「? 大丈夫?」

 その様子に、少女が訝しげに尋ねてくる。

「だ、大丈夫じゃ……童子(わらし)、ここはどこかの?」
「わらし? よくわからないけど、ここは?州(えんしゅう)……陳留の近くよ。場所も知らないなんて、どこから迷い込んだのかしら?」
「えんしゅう……? そんな地名、播磨にあったかのう……」
「はり、ま?」

 互いにはてなマークを出しあう、少女とゴンベエ。
 ゴンベエは、少女に向き直ると、その姿を凝視する。

(見たこともない服……どこかの透波かとも思うたが違うようじゃ……かといって農民でもなさそうじゃの。奇天烈な格好じゃ)

 ゴンベエにしてみれば、少女の着ているスカートなどは見たこともない服装である。
 ましてや金色の髪を、左右で結って巻いてある少女など、見たことも聞いたこともない。

「童子よ。おんし、この辺りの者かの?」
「だから、わらしってどういう意味かしら? 私はわらしなんて名前じゃないのだけど」
「は? 童子は童子じゃろ? 幼子という意味じゃ」
「おさ……貴方ねぇ、失礼にも程があるのじゃなくて? 似たような年格好の癖に」
「は?」

 少女の言葉にきょとんとするゴンベエ。
 似たような年格好?

「あのな……わし、三十路越えとるぞ?」
「嘘おっしゃい! 川原の水で自分の顔を見てから冗談を言いなさいよ」
「……へ?」

 少女に言われて、水面に顔を写すゴンベエ。
 その顔は――

「なっ!?」

 ゴンベエは自分の顔姿に愕然とする。
 普段見慣れた
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ