罰則
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返せ、俺の感動を。
黙ったままじっと見つめる姿は、ともすれば怒っているように見える。
だが短いながらの付き合いで、大体彼が何を考えているかはわかった。
そもそもが単純だしな。
「別に謝ることじゃない。俺が余計なことをいった」
「それでも遅くまでつきあわせてしまった。おまけに罰則まで」
「ああ。忘れてたな」
アレスは心底嫌そうな顔をして見せた。
「授業計画だっけか」
「ああ、何だったら俺がお前の分も」
「書いてくれるのか。で、どんな計画を考えているんだ?」
「軍人は戦うことが仕事だ。だから、座学よりもむしろ実技に力を入れるべきだ。具体的には毎日のランニングを校庭五周から十周に」
「お前は仲間まで敵に回す気か」
「む。では、二十周……」
「軍人ってのはなぜ否定されたらより酷くなるんだ。Mか、全員がどMなのか」
「駄目か?」
「そんな単純な回答を聞きたいわけじゃないだろう。第一、仮に二十周するとして、他の授業はどうするんだ。一周一キロとして、単純計算で二十キロだろ。朝一の授業に何人が間に合う。さらに、その出席した人間の何パーセントが真面目に授業を受けられる?」
男同士の立ち話は、他から見れば碌な噂にならない。
そう思って、アレスがフェーガンの計画の欠点を挙げながら歩き始めた。
どうやら彼が思っていたのは冗談ではなかったようだ。
不服そうな声をあげたフェーガンに、アレスは前を向いたままで答えた。
「君の言いたいこともわかる。それくらいできるのが軍人っていいたいわけだろう。それも間違えてはない、でも、ここは士官学校なわけだ。ただ走って終わりってのは、一般兵までで終わりだろう」
「我々には体力より学力が必要だと。マクワイルドはそう思うのか?」
「違うね。別に体力だの、学力だの――そんなのは大したことはない。重要なのは」
そこでアレスは言葉を区切って、振り返った。
その視線に、フェーガンも足を止める。
「学校の授業に不満があるのならば、どうすればそれを改善できるか。さらに言えば、それを学校に納得させる事が大切なのだと思うよ」
「……む」
困ったようにするフェーガンに、アレスはため息を吐いた。
「君の意見は――毎日二十キロ走ることで帝国に勝つことができると言うのなら、その具体的な効果を証明しろということさ。さらに言えば、反対意見を持つ人間を完膚なきまでに叩きのめすほどの説明でね」
「そんな事が……」
「できるわけがないか。ならば、何のために君は士官学校に入った。卒業したら少尉になって、君にだって部下ができるのだぞ。君の立てた作戦を君は自信を持って証明ができないのか。さらに言えば、上層部が反対したら、その作戦を諦めるのか?」
「む……アレスは」
「何だい
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