罰則
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名前を呼ばれ、それまで反抗的に睨むような視線を送っていたフェーガンの表情が強張る。
「はっ」
「馬鹿と言ったのは本当かな」
「え、ええ。言いました――無駄な時間であったからと思ったからです」
「無駄か」
小さくシトレは、その言葉を繰り返し。
「では、その有益な授業と言うものをまとめて書いて提出したまえ。明日の朝までだ」
驚いたようなフェーガンに、シトレは言葉を続けた。
「無駄かどうかは私が――そしてドーソン教官が判断する。もし、本当に無駄だと思うのならば、その根拠と改善策を提出して批判すべきだろう。それすらもせず、ただ上官に向けて馬鹿というのは批判ではなく、愚痴だ。そして、その判断に不服だと言うのならば判断できる立場になるのだな」
厳しい言葉に、しかしフェーガンは言葉を失った。
反論できる言葉もなく、ただ小さく口を開き、諦めたように口を閉ざした。
厳しい視線は隣で、終わったと小さく息を吐くアレスにも向けられた。
「で――彼はなぜいるのだね?」
「私にもわかりません」
即答で返された言葉に、理由を求めるようにシトレがドーソンへと向いた。
「その男は、小官を馬鹿にしたのであります」
「馬鹿にした?」
「ええ。帰り際の小官に向かい」
「怒りっぽいのでカルシウムが足りてないのではないかと。私は心配した次第であります」
「き、貴様――」
「ふむ。確かにいちいち候補生の言動に目くじらを立てる必要もないだろう。とはいえ、ドーソン教官の体調について君が心配することでもない。同じく罰として明日の朝までに、授業計画を策定して持ってくるように。レポート用紙50枚以上だ」
「何で、私まで」
「100枚だ」
「……わかりました」
深々とため息を吐きながら、アレスは立ち上がった。
シトレの言葉から立ち直れないフェーガンを引きずり、扉から出ていく。
白い自動扉が閉まるのを見届ければ、いまだ怒りさめないドーソンが不愉快そうにシトレに声をかけた。
「学校長。よいのですか、あのようなやからは軍に不利益をもたらします」
「ふむ。とはいえ、成績は優秀なのだろう」
「う、それは……」
ドーソンが口ごもったように、確かに二人の成績は優秀であった。
フェーガンは実技に関しては並外れた技能を有しており、逆にアレスは学科が得意だ。
それぞれ得意分野では学年主席のアンドリュー・フォークすらも凌駕しており、反抗的だという理由だけで退学させるには説得力に欠けていた。
「ま、かの有名なリン・パオやブルース・アッシュビーも清廉潔白であったわけではない。ましてや、いま学生にそれを求めても仕方なかろう」
「失礼ですが、英雄と呼ばれている方々と比べるにはあまりにも……」
「駄目かな。私は毎
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