罰則
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「馬鹿」
その理由を聞かれて、口にした言葉に理解できないというように教室の呼吸が止まった。
視線を一身に受けて、睨むような視線を教官に向けながら、対面する青年は断言した。
そこでようやく頭が動き出したのだろう。あけていた口を開いたままに、じゃがいも仕官ことドーソン教官は顔を赤くして、こめかみに血管を浮かび立たせた。
「フェーガン候補生――貴様、誰に何を言ったかわかって」
「授業時間は80分。テストの返却だけならば、十分もかかりません。それがわざわざ低い点数を公表する意味がわからない。だから」
流れるようにフェーガンは口にして、再びはっきりと口にした。
「馬鹿だと」
「ふざけるな! そんなだから、こんな点数を取るんだ」
「俺の点と、この無駄な時間は関係ないだろ?」
もはや反論を聞かず、ドーソンは教壇に腕をたたきつけた。
口角から泡を飛ばしながら、血走った瞳で睨みつける。
「今すぐ教官室にこい、いいな。フォーク――貴様はこれを配っておけ」
「は、は、はい」
慌てたように、席の前から神経質そうな男がテスト用紙を受け取る。それすらも見ずに、ドーソンは叩きつけるように扉を開ける。誰しも怒りが収まるのを待った。だから、その声は小さいながらも、静まり返った室内に余計に響いた。
「きっと栄養が足りていないんだな。じゃがいもでも食べてりゃいいのに」
それは隣の席との小さな会話だったのかもしれない。
けれど、はっきりと響いた声はドーソン教官の耳にも届いたようだ。
怒りの視線を声の主――アレス・マクワイルドに送り、
「マクワイルド候補生。貴様もだ!」
「俺もかよ」
教官の地獄耳にアレス・マクワイルドは小さく天を仰ぎ、隣で友人のスールがご愁傷様と苦笑した。
+ + +
教官室での説教という名の拷問は、二時間あまりも続いた。
正座の状態で日頃の成績から姿勢、態度に渡り細かく語りつくすドーソンの言葉は、ある意味生徒の様子を誰よりも見ているのではないかと考えさせられる。
もっとも、そんなことを悠長に考えているわけもなく、しびれる足を気づかれぬように組み替えるだけで精一杯だ。早く終わってくれと願うアレスとは裏腹に、ところどころでフェーガンが火に油を注ぐものだから、ドーソンがというよりはむしろ隣人の息の根を止めたほうがいいのではないかとアレスは本気で思い始めた。
最終的には肉体と精神の限界を迎える前に、シトレ学校長が見かねて声をかけた。
「もうその辺りでいいだろう。後ろも詰まっているんだ、その辺りにしておくといい」
「し、しかし学校長――こいつらには反省の色が」
「反省か……フェーガン候補生」
それまで穏やかだった学校長の言葉が、問い詰める色を持った。
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