プロローグ
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「……であり。ここに自由惑星同盟の未来を背負う若き英雄達を迎えられたことは、誠に喜ばしい限りである。自由惑星同盟軍は、諸君らを歓迎する。だが、一つだけはっきりと言わせていただくならば、諸君らが今後英雄と呼ばれるかどうか。それを決めるのは諸君ら自身であるということだ。願わくは、諸君らに明るき未来が待っているよう祈願し、訓辞とさせていただく」
シドニー・シトレ学校長の長い訓辞が終わり、緊張に体を強張らせていた生徒達は止めていた息を吐き出した。第一戦級の指揮官の感情こもった言葉は、これからの未来に期待を寄せる生徒たちの心を打ったのだろう。壇上から彼の姿が消えてもなお、生徒たちは頬を紅潮させながら壇上に視線を注いでいた。
たった、一人を除いて。
明るい未来か。
表情に苦味を残して、アレス・マクワイルドは小さく俯いた。
自由惑星同盟が今後どのような結末を迎えるのか。その全てを知っている彼からすれば、現在のシトレ学校長の訓辞は実に滑稽であり、どこか悲しさすら感じさせた。
自らの栄達と勝利を信じる周囲の人間で、果たして二十年後にどれだけの人間が生きていられることか。
宇宙暦786年、帝国暦486年、そしてアレス・マクワイルドが転生して十五年。
アレスは伏せた視線の中で、ここに至るまでを振り返った。
彼はこの世に生を受ける前の記憶がある。
中村透――それは平凡かつ凡庸な名前だったが、呼ばれなくなれば寂しさを感じるのが人間というものだ。金髪に茶色がかった瞳には今の容姿には似合わない名前だろうが、いまだに忘れることはない。
生まれ変わりというものを信じたこともなかったし、ましてや自らが体験する事になるとは思っていなかった。おまけに、それが有名な小説の世界ともなれば当然のことだ。
そう。
アレスは知っている。
自由惑星同盟が十三年後には崩壊する事を。
その渦中に自らの意思で飛び込もうと思ったのであるから、他人から見れば彼の行動は奇特であろう。
自分でもなぜ進路に士官学校を選んだのか答えることができない。
自らが世界を変えると言った強い意思があるわけでもないし、並び立つ英雄と会話を交わしたいというミーハーな思いがあるわけでもない。
ならば、なぜ――。
「どうしたんだい。体調でも悪いのか?」
考えに沈んでいた彼の背後から声がかかり、アレスは振り返った。
珍しいと思う。昔から考え事が多かったためか、眉間についた皺は十五年の歳月を経て、彼の表情を険しいものへと変えていた。
普通にしていても睨んでいると思われるのだ。
そのため、学生時代も声をかけられる事のほうが少なかった。
振り返った先には金髪の青年が立っていた。
人のよさそうな顔立ちをした
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