プロローグ
歌い手、箱庭に来る
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僕、天歌奏は今コンサートホールに来ていた。
コンサートを聞くためではなく、そこで歌うためだ。
「次で、本日最後となります。奇跡の歌い手、天歌奏君によるカーロミオベンです」
あ、アナウンスが流れた。ってことはもうピアノは片付け終わったのかな?
「天歌さん、準備終わりました」
「マイクと放送の方は?」
「言われた通り、全て電源は落としてあります」
「ありがとうございます。では、僕の歌をどうぞ楽しんでいってください」
さあ、準備は終わった。ここからは僕のステージだ。
僕は舞台袖からステージに上がり、その真ん中に立つ。
「本日は、お越しいただき、ありがとうございました。みなさん素晴らしい音楽を奏でて下さり、聞いていてとても楽しかったです」
僕は声を大きくするのではなく、全体に響かせてお客さん全員に聞こえるように声を出す。
音を響かせるのは得意中の得意だ。
「では最後に、僕の歌で締めさせてもらいます。カーロミオベン」
そして、僕は拍手がなっているうちに深呼吸をして、伴奏を歌う。
もちろん、ピアノの音を、自分の口から、腹から奏でるのだ。
そして、4小節の伴奏を終えると、ここからがメイン、歌も始まる。
「Ca-ro miobenn,cre-di-mi al-men」
もちろん、伴奏もやめない。同時に音を出し、伴奏と歌を奏でるのだ。
ここの歌詞に込められた意味は、『私のいとしい恋人よ。私を信じてくれ』イタリアの曲らしい、情熱的な愛の歌なのだ。
そして、そのまま一曲歌いきり、うまくいったことに安心する。
得意とは言っても、こんな人間離れしたこと、簡単ではないのだ。
「これにて、本日のコンサートは終了いたします。本日はどうもありがとうございました」
僕が頭を下げると、拍手が起こり、幕が降りてくる。
そのまま幕が降りきるまでは頭を下げ、降りきると頭を上げる。
「ふう、疲れた・・・喉も乾いたし・・・」
「お水、どうぞ」
「うわ!」
急に首筋にキンッキンに冷えた水を押し付けてきたのは誰だ!?
変な声が出ただろ!喉に影響が・・・ないな。全く違和感がない。
「あの、水はありがたいんですけど、急に押し付けるのは・・・」
「ごめんね〜。でも、肩の力は抜いたほうがいいかな〜と思って」
・・・とりあえず水を受け取って飲む。
まあ、この人の言ってることは合ってるんだよな・・・この格好だとどうしても力が抜けないし。
もう終わったんだから抜いたほうがいいのは明白、そして、この人はそれができるようフォローしてくれた。
文句言いづらくなったな・・・
「そういうことなら、
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