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久遠の神話
第四十九話 スペンサーの剣その十二
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「そして闘っている」
「勝てるのか」
「間違いなく」
「言ってくれたな。では我にどうして勝つ」
 竜は己に絶対の自信を感じながら述べていく。
「竜である我に」
「竜は無敵か」
「そうだ、無敵だ」
 やはり自信を見せる。それも絶対の。
「人が一人で勝てるものではない」
「それは間違っている」 
 スペンサーは己を見下ろし毒を垂れ流し続ける竜を見上げながら返す。
「竜は無敵ではない」
「我に勝てるというのか」
「如何にも。君は既に一度負けている」
 『君』だった。竜を明らかに己より下に見ていた。
「それでどうして無敵なのか」
「カドモスのことか」
「君はあの英雄に敗れている、どうして無敵なのだ」
「では言おう。御前はカドモスではない」 
 竜もまたスペンサーに返す。
「我はカドモスにしか倒されることはない」
「一人の相手にはか」
「では見せてもらおう。どうして我を倒す」 
 竜は悠然とさえしてスペンサーを見下ろし続けていた。
「どうしてだ」
「では来るのだ」
「来いというのか」
「私はこの剣で君を倒す」
 スペンサーも毅然として竜に告げる。
「今ここでだ」
「恨みは受けない」 
 竜はスペンサーに対して死の宣告を告げた。
「では死んでもらう」
 竜は尾を動かしてきた。スペンサーから見て右手にその尾が来た、それは巨大な鞭そのものだった。
 鞭が迫る、それを見てだった。
 工藤はその目を鋭くさせてこう高橋に言った。
「あれだけのものが直撃すれば」
「幾ら大尉でもですね」
「重傷は免れない」
 少なくとも戦闘不能になるだけのというのだ。
「下手をすれば死ぬことになる」
「ですね。あの尾は」
「君はかわせたか」
「はい、そうするつもりでした」
 実際にそう考えていたというのだ。
「それで敵の攻撃と注意を引き付けて」
「隙を見つけてだな」
「急所、喉元ですね」
 見ればこの竜も喉元の鱗は弱い。これは逆鱗ではないがそれでもそこは弱いことは鱗から明らかなことだった。
「そこを狙うつもりでした」
「妥当な戦術だな。だが」
「その戦術を実現するには」
「一人では無理だ」
 高橋一人ではというのだ。
「当然俺一人でもだ」
「無理ですね」
「相手も弱点はわかっている」
 竜自身も把握しているというのだ。
「それならばだ」
「そこを狙うこともですね」
「難しい」
「だから俺達二人ですとやれますが」
「大尉一人ではな」
「本当にどうするつもりでしょうか」
 高橋はここで首を捻って述べた。
「勝つにあたって」
「わからなくなってきたな」
「はい、俺もです」
 高橋自身もだというのだ。
「一人であいつは無理に思えますけれど」
「尾だけではないからな」

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