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久遠の神話
第四十九話 スペンサーの剣その十一

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「大尉位の体格があってだ」
「それで扱えるものですか」
「そうした代物だ。さて」
「大尉があの剣をどう扱われるかですね」
「その腕と。さらに」
「力ですね」
「それを見させてもらおう」
 工藤は鋭い目で竜の前に出て対峙する彼を見ながら言った。
「是非な」
「そうですね。それじゃあ」
「あの剣を扱うことも難しいが」
「あの竜も一人ですと」
「容易に勝てる相手じゃない」
 工藤は言い切った。
「だからカドモスの従者達も皆殺しにされ」
「カドモスも苦戦したんですね」
「竜は強いから竜だ」 
 工藤は言い切った。
「弱い竜は竜ではない」
「そういうことですね」
「さて、大尉はあの竜とどう闘うか」
「見せてもらいますか」
 二人は剣を手にしたまま固唾を飲んで見守っていた。スペンサーは己の優に十倍はあるその竜を見上げていた。そして。
 すすす、と前に出て右から左にその剣を一閃させた、しかしその一閃は竜の鎧の如き鱗の前に弾き返された。
「やはりな」
「相当な硬さですね」
 二人はトゥーハンドソードを弾き返した竜の鱗を見て言う。
「腹であれだ」
「斬るのは難しいですね」
「突くこともだ」 
 工藤はそれもだと話す。
「簡単にはいかない」
「そうでうね。力を使わないと」
「しかも相手も馬鹿じゃない」
 竜の方もだというのだ。
「それはわかっている」
「じゃあ突くこともまた」
「簡単にはできない。しかもだ」
 竜の顔を見る。その数列も連なっている無数の牙からは禍々しい濃紫の毒が滴り落ちていた。 
 毒はアスファルトに落ちる、するとそこからだった。
 アスファルトは紫の蒸気を発し溶ける。それが竜の毒だった。
「ヒュドラーの毒と同じだな」
「何もかもを殺す猛毒ですか」
「そうだ、それだ」
「ちょっとでも受ければ」
「苦しみ抜いて死ぬ」
「噛まれるどころか触れでもしたら」
 それでだというのだ。
「そこで終わりですね」
「あの毒に竜の身体に」
 尻尾もあった。高橋が狙おうとしたそれだ。
「やっぱり一人じゃ」
「中々勝てない相手だ」
 工藤は言い切った。
「俺達二人でだ」
「倒せる位ですね」
「しかし大尉は一人で向かう」
「倒せるでしょうか」
「それを見させてもらう」
 工藤は確かな声で高橋に答えた。そして。
 スペンサーは二人の前で戦い続ける、その中で。
 彼は弾かれた剣を構えなおしていた。その彼に竜が問うてきた。
「剣士よ、いいか」
「何か」
「御前は我に勝てると思っているのか」
「だから今ここにいる」
 これがスペンサーの返答だった。
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