第一物語・後半-日来独立編-
第四十六章 火炎の鳥《2》
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流魔結晶発掘量を増やせと抗議文が送られてきたものだ」
「抗議文ですか……? それは初めて聞きましたね、隠し事ですか?」
ライタームの言葉を聞き、しまったと後から思った。
普段はお喋りなので、ついつい口が滑ってしまった。
彼の視線を受けながら、粘る汗がにじみ出る。
「その時、お前は急用でいなかったからな。こちらで片付けたまでだ。それに発掘量の増加も短期間だけだったのでな、数年分の発掘量削減で手を打ったのだ」
「だからといって、せめて軽くでも目を通させるような配慮はないのですか」
「これからは気を付けよう」
「それではまたやらかしそうですね。国のトップであり、世界の中心に立つ貴方がそれでは、先が思いやられますよ」
「やる時はきちんとやる奴だと知っているだろ?」
「やる時だけ、ですがね。本当に困ったものです」
鼻で息を吐き、ライタームは肩を落とす。
風が二人の身体を撫でるなか、彼らの元に急ぎ足で社交院の男性が一人近付いて来た。
何やら焦った様子で、数歩手前で止まる。
「お話し中、失礼致します」
軽く一礼した後、男性はそう言う。
右手に筒状にした紙が握られているのを見て、なんらかの報告なのだろうと思った。
なので、
「どうした」
一言。
これが了解の合図となり、男性は話し始める。
「はい、黄森から辰ノ大花の宇天長の正式解放時間が送られて来ました。これが……」
と、男性は筒状の紙を広げて、ジスアムとライタームに向ける。
真新しい白の紙には、直筆でこう書かれていた。
神州瑞穂辰ノ大花所属宇天学勢院覇王会会長、委伊達・奏鳴の解放時間は予定より三時間早め、本日午後十四時に執り行う。
残りの時間を有意義に過ごすといい。
最後の文は、こちらに対する挑発とも取れる文だったが二人は無視した。
重要なことは、そこではないからだ。
ジスアムは文を読むや否や、男性からその紙を手に取る。
何を考えているのか、唸るように声を喉から出している。
すると、次の瞬間。
空気を圧すような、強烈な砲口が彼らの鼓膜を叩いた。
甲板にいる者や艦内にいる者も皆、両の手を耳に当てた。
咆哮は数秒だけ終わり、後からは静けさが戻ってきた。
何事かと、咆哮が聴こえた西へと顔を向ける。
向ければ分かる。
甲殻を持ち、頭部には一本の角が天を貫くように生えている魔物の姿が。
大きさは五十メートル程の、竜に似たそれが空を飛んでいた。
「まさか、あれがこれを持ってきたのか」
紙を男性に向けてジスアムは言い、言われた男性は首を横に振る。
いいえ、から始まる言葉。
「黄森の噂の魔物使者|《モンスターテイマー》からです。見えないでしょうが、丁度頭部の部分に」
「何故わざわざ遠回しに。
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