第1幕 仙石権兵衛
[6/8]
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
聞いてもらえますか?」
「もちろんです! 任せてください!」
そう言って、ドン、と自分の胸を叩くゴンベエ。
その姿に大男――貂蝉は、呆れるように呟いた。
「まだ内容も言ってないのに、せっかちな子ねぇん」
「ふふふ……そういう人物なのですよ、ゴンベエは」
半兵衛は、そう言って笑う。
二人の様子に、先走った事に気付き、顔を赤らめるゴンベエ。
「あー……それで、どんな頼みごとで?」
「実は……貴方には少し遠い場所に行ってもらいまして。そこで一人の人物の未来を変えてほしいのです」
「未来を……変える?」
「ええ。まあ、簡潔に言えばそちらで一人の人物が、信長様のように世を変えようとして頑張っています。ですが……このままだとその者は、夢を果たせずして死にます」
「なっ!?」
ゴンベエは愕然とした。
天下に名高き、信長様のような人物が他にもいた事。
そして、その人物が死にそうだという。
「ああ、あくまでも『このままでは』ですよ。あなたが行った先では、まだ尾張の一勢力に過ぎなかった信長様と同じような状況です」
「尾張の頃の……ですか」
「ええ。ちょうど籘吉郎様がおね様と婚姻なされた頃……そういえばわかりますか?」
「……以前、籘吉郎様から聞いたことはありますが……」
半兵衛の言葉に首を傾げるゴンベエ。
彼が羽柴籘吉郎秀吉に仕え始めたのは、斎藤家が滅ぼされた後なのだ。
その籘吉郎秀吉が、未だ木下の姓で織田信長にとして仕えるようになったのは、実に二十八年前。
小者として仕え、その才覚を見出されて普請奉行、台所奉行などで功を成し、愛妻であるねねと婚姻したのが、1561年(永禄4年)であった。
「まあ、あなたはその頃、乳飲み子でしたからね……つまり、私があなたにお願いしたいのは、信長様に籘吉郎様がおられたように、その人物に貴方がいてあげて欲しいのです」
「うええっ!? わ、わしが籘吉郎様のように、ですか!?」
ゴンベエは、今頃になって自分が安請け合いした内容に驚く。
「あ、あの……わ、わし、馬鹿なんですが……」
「ははは。なにも籘吉郎様と同じに振る舞えなどとは言いませんよ。籘吉郎様は籘吉郎様。貴方は貴方です」
「は、はあ……」
汗をだらだらとかきつつ、曖昧に頷くゴンベエ。
その様子に、貂蝉が半兵衛に耳打ちする。
「(ぼそぼそ)ちょ、ちょっとハンベーちゃん! 本当に大丈夫なのん? どう見ても貴方の代わりになんて、なれそうにないわよ?」
「(ぼそぼそ)大丈夫ですよ。彼は勘で道理がわかる男です。きっとドタバタしつつ成し遂げてくれますよ」
「(ぼそぼそ)でもねぇ……やっぱ貴方が行ってくれない? アタシは貴方に行って欲しいんだけど……」
「(ぼそぼ
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ