暁 〜小説投稿サイト〜
センゴク恋姫記
第1幕 仙石権兵衛
[3/8]

[1] [9] 最後 最初 [2]次話

 だが、ゴンベエは、そんな二人とは対照的に平然としていた。

「お前らな……そんなさも警戒してますじゃ、相手がどう動くかわからんじゃろが。ああいう相手はむしろ平然として対応するもんじゃぞ。まあ、もう遅いがの……」

 かつては間者働きで、長島城への潜入すら行ったゴンベエである。
 不審者や怪しい者への対応、その思考を誰よりも読みきっていた。

 伊達にその身一つで一万石まで登りつめた訳ではないのである。

「じゃが、あやつも警戒されとるのに平然とまあ……肝がすわっとるのう。どれ……声を掛けてみるか」
「ゴン兄ぃ!?」

 そう言って馬を進めるゴンベエに、慌てる孫。
 その後ろでは、すばやい手つきで火種を作り、国友銃へ弾丸を詰めるソバカスがいた。
 その手腕は、実に神業とも呼べる素早さだった。

「おぅい。そこの怪しい兄ちゃん。わしになんか用かのう?」

 相手がいる数十mという距離で、馬を止めたゴンベエが不敵に笑う。
 その表情は、三十路を過ぎてますます精悍だった。

 容貌(つら)の勇壮さで召抱えられたという逸話は、伊達ではないのである。

「ゴン兄ぃ! お下がりを!」

 その馬の前に、身を挺するように槍を構える孫こと、萩原孫太郎国秀。
 普段はどんなにゴンベエを馬鹿にしていても、彼ほどゴンベエの忠臣はいないといえる。

「まあ、そういうこっちゃ。お前さん、あからさまに怪しいんでの。ちくと止まってくれるかのう」

 ゴンベエの言葉に、無言のまま足を止める優男。
 その姿は旅をする商人のようだったが、どこか不自然な違和感があった。

「ふむ……盗賊の類ではなさそうだが、なにやら面妖じゃの。もしかして、噂に聞く伊賀忍びかの?」
「………………」
「…………黙っとっちゃ、わからんぞ?」

 そういうゴンベエも、顔は笑いながら腰の刀の鞘を押さえる。
 いつでも抜刀できるように用心している。

 そしてゴンベエの後方から伝わる殺気……それはソバカスが優男に狙いをつけたものだった。
 ちらりと横目で確認すると、再度優男へと向き直る。

「誰の手の者か……白状するなら命は助けんこともない。まあ、ここでわしを狙うぐらいじゃから毛利か……それとも、宇喜多から毛利に寝返ったばかりの伊賀氏か……」

 その言葉に、ニヤリと笑う優男。
 瞬間――

「ソバカス!」

 ドパァーンッ!

 ゴンベエの叫びと、ソバカスの銃撃は、ほぼ同時だった。

 そして、優男が爆発したのも同じだったのである。




「………………む?」

 ゴンベエは、気がつくと白いもやの中で倒れていた。
 周囲はまるで白い霧が視界を覆うように漂っている。

「どこじゃ、ここは
[1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ