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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百六十話 名簿
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ます」
「うむ」
こちらも可能性は有る。本拠地は叩いたがまだまだ安心は出来ない、しかしほんの僅かだが地球とフェザーンの繋がりが見えてきたようだ……。
帝国暦 489年 6月 16日 オーディン ウルリッヒ・ケスラー
ドアを開けて店の中に入るともわっとした煙草の匂いが鼻を突いた。店の中は光の乏しさと煙で決して視界が良好とは言えない。ビリヤードをしている客は決して多くは無い、テーブルも幾つかは空いている。だが店の中の煙草の煙は決して弱くはない、軍服に付くだろう。ここに来た翌日は必ず軍服を替える事になる。
マスターに視線を向けると向こうもさりげなくこちらに視線を向けてきた。微かに目礼して頷く、どうやら相手は先に来ているようだ。そのままゆっくりと奥へと向かう。突き当りのドアを開ければ緩やかな曲線を描く螺旋階段が有る。一階はプールバーだが二階はシングルスバーだ。そして地下一階が物置でその下は何もない事になっている。
ドアを開けて螺旋階段に出た。おそらくプールバーの人間は私が二階のシングルスバーに向かったと思っているだろう。だが私は階段を上らずに下に降りた。地下一階の物置部屋、ドアには電子キーが付いている。この電子キーの暗証番号を知っているのは一部の人間だけだ。或る組織に所属する者、皇帝の闇の左手と言われる人間達……。
電子キーの暗証番号は月に一度、陛下の指示を受け私が変更する。変更の手続きを行うのはプールバーのマスター、当然だが彼も我々の組織の一人……。いや、二階のシングルスバーの責任者も組織の一員だ。そしてこの建物自体、皇帝の闇の左手が持つ施設の一つだ。
暗証番号を押しキーを解除してから中に入る。そして真っ直ぐに歩き突き当りのドアを開けるとまた階段だ。但し今度は螺旋階段ではない、下に降りるだけの一方通行の階段だ。その階段をゆっくりと降りる。この建物には無い筈の地下二階が顔を表す。
地下二階、行き止まりだ、その下は何も無い。鉄製の重厚なドアが有るが鍵は何一つ付いていない。万一、部外者がここまで来てもその不用心さに使用していない部屋だと思うだろう。だが部屋の中では外に人が居るのを知っているはずだ。あの地下一階の電子キーを解除した時点で地下二階にも通知がいく事になっている。いやその前にプールバーのマスターは私が下に向かった事を知らせているはずだ。
重く頑丈なドアを開け中に入る。部屋の中では四人掛けのテーブルにキスリングが腰かけて私を待っていた。
「待たせたかな?」
「いいえ、私も五分ほど前に来たところです。コーヒーが出来るまでもう少しかかるでしょう。冬なら堪えがたいところです」
「そうだな」
テーブルの上のコーヒーメーカーから微かにコーヒーの香りが漂う。帝国製のものではない、フェザーン製のも
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