王妃様とヘンリーくん
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応は、はかばかしいものでは無かった。
当然のことだ、しかし肝心のヘンリーが、王位を望んでいないのだから。
陛下もまだまだお元気で、子供たちは未だ幼い、時間をかけて説得すれば良い。
そう構えていた私に、過激な者たちがヘンリーの暗殺を企てているとの情報が入る。
のんびり構えて命を奪われては元も子も無い、王位のことはともかく、デールと全く同じように想えるかは、ともかく。
大切に思っていることには、違いは無い。
焦る私に陛下はますます渋い顔をされ、そうしている間にもヘンリーは危険に晒されているやも知れず。
憔悴する私に、ヘンリーが言う。
「ははうえ。ぼくは、しろを、でようとおもいます。たすけて、いただけないでしょうか」
ヘンリーを、助ける。
城から、出すことで。
そうだ、もうそれくらいしか。
この子を守るには、それくらいしか。私に出来ることは、無いのではないか。
「ぼくひとりでは、しろからそとに、でることもできません。でたあとに、いきていくことも、できません。どうか、ははうえ。たすけて、ください」
穏やかな生活を送るだけなら、何も城でなくとも良い、命さえあれば幸せを得ることも出来よう。この城には、この子の敵が多過ぎる。
城から出して保護し、デールが王位を継いだその後に、改めて城に迎えても良い。
ともかく、今は。
この子の命を、守らねば。
ヘンリーと示し合わせ、裏で手を回して誘拐の手筈を整えることと、その可能性を匂わせることで、焦って手を汚す必要は無いと知らしめることと。
危険を感じ取ってでもいるのか、一刻も早く城を出たいと焦るヘンリーを、焦るあまり失敗しては元も子も無いと宥めすかし。
受け入れ先も含めて全ての準備を整えたその日が、陛下がヘンリーに教育係を付けた日であったことは、予定外ではあったけれど。
些細な問題ではあったし、そのことは実際、ヘンリーの行方に影響を及ぼしはしなかった。
問題は、実行した者が裏切ったらしいこと。
私の手の者に引き渡す前に、別の何者かに引き渡そうとしたらしいこと。
恐らく、より高い報酬を示されでもしたのだろう。
救出に向かった教育係の男を疑う声も出たが、居合わせた兵士の証言、報告を受けた陛下の迅速な対応による事実確認、現場に残された戦いの跡に、父を追った娘が身に付けていた筈の、無惨にも擦り切れ焼け焦げたケープ。
全てが、男の無罪を。
男と娘の命が、失われたであろうことを示していた。
陛下が捜索隊を出されるのとは別に、手を尽くして調べさせたが、ヘンリーの行方も、安否も。杳として知れなかった。
憔悴する私を、陛下は気遣ってくださった。
疑われもし
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