王妃様とヘンリーくん
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のに、ほとほと疲れ果ててはいたけれど。
ヘンリーをも、我が子同然に愛しく思う、その想いに変わりは無い。
筈、だった。
そうでは無かったことに気が付いたのは、ヘンリーに打ち明け話をされた時だった。
「ははうえ。ぼくは……、おうには、なりたくありません。みんなが、ぼくは、ふさわしくないといってるのを、しっています。ぼくも、そう、おもいます」
「何を言うのじゃ、ヘンリー。そのような戯れ言を、真に受けるで無い。陛下も妾も、そのようなことは思うてはおらぬ。世継ぎの王子は、長子であるヘンリー。其方なのじゃ」
窘める私の言葉に、ヘンリーは俯き。
「……ぼくは。なりたく、ないんです。からだはよわいし、あたまも、よくない。ひとに、つよくものを、いうことも、できない。おうになっても、……つらい、だけだと、おもいます」
ヘンリーが、ヘンリー自身が。
王に、なりたくは無い。
それが、事実であるならば。
デールが王になることに、何ら問題は無いではないか。
ヘンリーは王位の重圧から解放され、私は周囲の期待に応え、圧力からも解放され、讃えられて。
デールは国の頂点に立ち、栄光の道を歩む。
あとは、陛下のお気持ちだけ。
陛下にさえ受け入れて頂けば、デールが。
王に、なれる。
そのことに、喜びを感じ。
感じた自分に衝撃を受ける。
私は、ヘンリーを。
我が子同然に、愛していたのでは無いのか。
そうしようと、決意したのでは、無いのか。
「……ははうえ?」
目の前のヘンリーは、私を信じ切った瞳で。
真っ直ぐな瞳で、衝撃のあまり黙り込む私を、不安げに見やる。
「おかげんが、わるいのですか?」
我に返り、応える。
「いや、大事無い。ともかく、ヘンリー。そう、結論を急ぐものでは無い。体はこの先、丈夫にもなろうし、王たる者に必要なのは個人の優秀さばかりとも限らぬ。我が身を省み、他人を思いやれる其方が、王に相応しくない等と言うことは無いのじゃから。もう一度、よく、考えてみるのじゃ」
「……はい」
また、窘めはしたものの。
完全に否定し切れなかった時に、私の心は、もう決まっていたのかも知れない。
その後も変わらず、弱々しく王位を拒否し続けるヘンリー、強まる圧力。
兄のため、王位に就く可能性を受け入れ始めたデール。
自分の心に芽生えた、輝かしい誘惑。
いつしか、私の心は決していた。
デールを、王位に就けよう。
陛下を説き伏せ、ヘンリーには王兄として。
穏やかな生活を、与えよう。
決意の元に根回しを始めるが、元々そう求めていた周囲はともかくとして、陛下の反
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