プロローグ
落ちてきた私と師匠
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「遅いっ!! 指を立てたらすぐに凝って言ったでしょうが」
「うぅ……師匠の鬼!!」
殴られた頭の痛みに、思わず悪態をついてしまう。
私を殴った師匠は、怒っても可愛らしい表情で赤色のゴスロリドレスのスカートの裾を軽やかに揺らしながら睨んでくる。
「強くなりたいって言ったのはスミキ、あんただわさ。あたしの弟子なら四の五の言わずにやるっ」
そう言いつつ、またひっそりと指を立てた師匠に気がついて慌てて私は凝を使う。
目に力を込めるというか……集中すると、その指先に念で作られた数字が見える。
「6!!」
「正解」
満足そうに師匠は微笑んだ。
◇
私は井上 澄樹。
男みたいな名前だが、れっきとした女である。男の孫が欲しかったお祖父ちゃんが付けてくれた名前で、自分でもちょっとこの名前には困らされていた。
……過去形なのは、マンガのハンター×ハンターだったこの世界に、私が落ちてきてしまったから。
元の世界の最後の記憶は、海外旅行に行くために乗っていた旅客機が天候不良時にエンジン故障で海へと墜落する瞬間だった気がする。
あれから二年たった今でも、悪夢として時々見るくらいだ。
そして、何故か師匠に拾われ今に至っている。
私の師匠は、ビスケット=クルーガー、通称ビスケ。
原作のGI編で主人公たちの師匠となる人。
見た目は金色の髪の人形のように可愛らしい少女。
実際の筋骨粒々としたあの姿は、私は見たことはない。
ちなみに、宝石の原石を求めてアイジアン大陸にある原生林の奥の鉱山まできた所、上空から光を放ちながら私が落ちてきたそうだ。
……思わず、それを聞いたときに「親方! 空から女の子が!!」という、あの有名なセリフを言いそうになった私を誰もせめはしないはず。
それで、色々身の上を聞かれたりなんだりして、かなり怪しまれたんだけど……まあ、ここがマンガの世界だということだけは隠して身の上を話して、信用してもらった。
まあ、持っていた持ち物がこの世界にはないものだったしねえ。
手持ちの細々したものを入れていた肩掛けタイプの布カバンも一緒にこっちに来たみたいで、その中にこの世界じゃ使われてない文字が使用された小説や、目的地だったイギリスのガイドブックとかモバイルPCとかMP3プレイヤー(ipodじゃない)とか化粧品が色々入ったポーチとか出てきたから。
漢字自体は、ハンゾーの出身地だっけ? ジャポンは漢字を使ってるみたいだけど、ひらがなとカナは存在しないみたい。
師匠が、こんな私を拾ってくれた理由は実は他にもある。
私……もうすぐ三十路、アラサーの28歳なんだ。
でも、この世界に来たら
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