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銀色の魔法少女
第三十八話 狂気
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 右腕に魔力を込め、扉を壊す。

 粉々に砕け、その先に目を大きく開けた遼がいる。

 その瞳は黒く、まるで黒曜石のようだった。

「ああ、そんな…………」

 私の悪い予感は的中した。

 遼の侵食は、私の予想を超えた所まで来ている。

「なんで言ってくれなかったのですか!?」

 私は遼に抱きつく。

 そして、触れて分かる。

 瞳だけじゃない。

 体内のいたるところが、既に変化している。

「……今はそれどころじゃなかったから」

「何がそれどころじゃない、です! 自分がどんな状況かわかっているのですか!?」

 いや、遼はわかっていて言ってる。

 長年一緒にいたからわかる。

 彼女は自分の命なんて少しも考えていない。

 私は、それが悲しかった。

「ねえ、あとどれくらい持つ?」

「…………恐らく、今年まででしょう」

 ここまで侵食が早いのは私も初めてだったけれど、今の感じだとそれが限界。

「そう、なら大丈夫かな」

「何が、大丈夫なんですか?」

 遼が次に言った言葉は、私の中に芽生えかけた希望を潰すには十分だった。





        「それだけあれば、はやての問題を終わらせられる」




said ALL

 夜、日が落ち、完全に闇に包まれた頃、海鳴の一部に半円状の結界が張られていた。

 内部にはなのは、ヴィータ、フェイト、シグナム、ザフィーラ、アルフにユーノがいて、

 外部にはクロノと局員、それに闇の書とシャマルがいた。

 新たにカードリッジシステムを搭載したなのはたちに苦戦する守護騎士たち。

 そして、外から脱出方法を探っていたシャマルにクロノが杖を突きつける。

 絶体絶命のピンチ、そんな時だった。

「はああああああああああああああ!」

 突如現れた仮面の男が、クロノを蹴飛ばす。

「何ぃ!?」

 クロノは急な攻撃に反応できず、そのまま隣の建物のフェンスに叩きつけられる。

 仮面の男は言う。

「闇の書を使え、さもないと騎士を失うことになるぞ」

 シャマルは迷った。

 確かに、このままでは誰かが捕まるかもしれない。

 けれど、アレは結構な量のページを消費する。

 つまり闇の書完成が遠のくことになる。

 真実を知ったシャマルはそれだけは避けたいと、迷う。

(いっそのこと、ここで闇の書を壊して、転生させればはやてちゃんだけでも――)

 そう思い、闇の書に手をかけた時だった。

「「「!?」」」

 結界の外にいた全員が空を見上げる。

 そこには以上に発達した雷雲、その中央に佇む少女がいた。

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