第三十八話 狂気
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
右腕に魔力を込め、扉を壊す。
粉々に砕け、その先に目を大きく開けた遼がいる。
その瞳は黒く、まるで黒曜石のようだった。
「ああ、そんな…………」
私の悪い予感は的中した。
遼の侵食は、私の予想を超えた所まで来ている。
「なんで言ってくれなかったのですか!?」
私は遼に抱きつく。
そして、触れて分かる。
瞳だけじゃない。
体内のいたるところが、既に変化している。
「……今はそれどころじゃなかったから」
「何がそれどころじゃない、です! 自分がどんな状況かわかっているのですか!?」
いや、遼はわかっていて言ってる。
長年一緒にいたからわかる。
彼女は自分の命なんて少しも考えていない。
私は、それが悲しかった。
「ねえ、あとどれくらい持つ?」
「…………恐らく、今年まででしょう」
ここまで侵食が早いのは私も初めてだったけれど、今の感じだとそれが限界。
「そう、なら大丈夫かな」
「何が、大丈夫なんですか?」
遼が次に言った言葉は、私の中に芽生えかけた希望を潰すには十分だった。
「それだけあれば、はやての問題を終わらせられる」
said ALL
夜、日が落ち、完全に闇に包まれた頃、海鳴の一部に半円状の結界が張られていた。
内部にはなのは、ヴィータ、フェイト、シグナム、ザフィーラ、アルフにユーノがいて、
外部にはクロノと局員、それに闇の書とシャマルがいた。
新たにカードリッジシステムを搭載したなのはたちに苦戦する守護騎士たち。
そして、外から脱出方法を探っていたシャマルにクロノが杖を突きつける。
絶体絶命のピンチ、そんな時だった。
「はああああああああああああああ!」
突如現れた仮面の男が、クロノを蹴飛ばす。
「何ぃ!?」
クロノは急な攻撃に反応できず、そのまま隣の建物のフェンスに叩きつけられる。
仮面の男は言う。
「闇の書を使え、さもないと騎士を失うことになるぞ」
シャマルは迷った。
確かに、このままでは誰かが捕まるかもしれない。
けれど、アレは結構な量のページを消費する。
つまり闇の書完成が遠のくことになる。
真実を知ったシャマルはそれだけは避けたいと、迷う。
(いっそのこと、ここで闇の書を壊して、転生させればはやてちゃんだけでも――)
そう思い、闇の書に手をかけた時だった。
「「「!?」」」
結界の外にいた全員が空を見上げる。
そこには以上に発達した雷雲、その中央に佇む少女がいた。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ