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DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 五章
五章 導く光の物語
5-35勇者と王子
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あ。生まれてから、旅に出るまで。ずっと、あそこで育ってきた。良いことばかりでは無かったとは言え、行方不明の父上や、亡くなった母上や。皆との思い出のある、大切な場所だ」
「それなら。仕方ないと、思う。わたしも、村が、無くなって。平気じゃ、なかった」
「そうだな。ユウの村は、もう無いのにな。存在しているだけ、余程マシだと言うのに。本当に、情け無い」
「アリーナ……」

 沈黙が、訪れる。

 少女が、静かに沈黙を破る。

「……わたしは、大丈夫だから。みんなも、いるから。アリーナがだめなら、わたしたちが。アリーナの、大切な、お城を。取り返すから」

 アリーナが顔を上げ、少女を見る。
 少女は、正面から見つめ返す。

「アリーナは、王子様だから。しっかりしないと、いけないのかも、しれないけど。わたしが、勇者なのに。わたしだけに、させようとしないで。みんなが、助けてくれるみたいに。わたしも、アリーナを、助ける」

 アリーナは黙って、少女を見つめる。
 少女は、視線を逸らさない。

「大丈夫。絶対に、取り返せる。みんなで、頑張ろう」

 長い沈黙を、少女はアリーナを見つめたまま、待つ。

 アリーナが、口を開く。

「……そうだな。強くなって、どんな強敵も、倒して来て。少し、勘違いしていたようだ。いくら強くなろうとも、俺は、所詮、ひとりの人間だった。ひとりで出来ることなど、たかが知れている」

 アリーナが、少女に笑いかける。

「ユウ。助けて、くれるか」
「うん。わたしは、アリーナよりも、弱いけど。ひとりじゃだめでも、一緒なら、きっと。大丈夫だから。一緒に、頑張ろう」
「ああ。宜しく頼む」

 アリーナが、立ち上がる。
 少女は見上げて、問いかける。

「もう。大丈夫、なのね?」
「ああ。もう、大丈夫だ。戻ろうか」
「うん。みんなが、待ってるね」

 アリーナに手を引かれて少女も立ち上がり、ふたりは宿に戻る。



 女性陣が買い物から戻ったところに出会(でくわ)し、表情の晴れたアリーナを見て、ブライとクリフトが顔を見合わせる。

「王子」
「……アリーナ様」
「大丈夫だ。心配かけたな」
「ふむ。まだまだお若いのですからな、あまりご無理は、なさいませぬように」
「ああ」
「……お元気に、なられて。良かったですわ」
「ああ。ユウと、お前たちのお蔭だ」
「私など。ユウさん、ありがとうございます」

 僅かに憂いを滲ませて、クリフトが少女に微笑みかける。

「……クリフト?」
「家臣である私たちでは、どうにもならないことが、ありますから。ユウさんがいてくださって、良かったですわ」
「……そう。……大丈夫?」
「はい。勿論です」

 今度は憂いも含
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