第五章、その1の3:狂王の下僕
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道杖から放たれる赤銅色の散弾が、それらをすべて吹き飛ばした。
「・・・これは、些か厄介だな」
魔力が障害物に当たっても砕けぬようにするためには、何か別の魔術が必要なのだろう。打ち出す魔術と制御する魔術、一度に二つの魔術を使うのだ。だがあまりに不安定過ぎる魔力でこれらを行うのは、今のチェスターには出来ないことであった。そうと決まれば慧卓が此方に来ないよう火球を打ち出すのみ。
チェスターは火球を展開してそれを幾度も放出し、慧卓は魔力を打ち出してそれを破砕していく。慧卓は、無尽蔵に湧いて出る自分の魔力を変だとは思ったが、知識不足のためかそれに疑いを持たず、ただ勝利のために走っていく。火球と散弾の応酬をくぐりぬけ、巻き上がる煙を突っ切り、慧卓はついにチェスターに接敵し、満を持って剣を抜いた。
「せいやぁっ!!」
「むっ!」
チェスターは手を広げて障壁を再び展開し、剣を受け止める。ぎりぎりとして微動だにしない剣に舌打ちをすると、慧卓は障壁に魔道杖を押し付けるとゼロ距離から散弾を放つ。『ばぁん』と、障壁が大きく揺らされ、チェスターの手に俄かな違和感が生じる。まるで昆虫の歯が肌を噛んでいるような些末なものだったが、しかし肌を食い破り肉を噛み千切る恐れがないとは言えなかった。
散弾が何度も撃たれて障壁が揺れ、ゆっくりと、しかし確実に罅が入っていく。そして五度目の射撃を受けて、ついに障壁はガラス窓のように砕け散った。抑えられていた剣に勢いが生まれて振り下ろされるが、目標を誤って台座に当たってしまい、まるで空気砲のように発されたチェスターの魔術によってくるくると飛んで行ってしまう。『ならば魔道杖で』と迫るも、錫杖によって制されて中々相手を狙えない。
「この野郎っ!!」
慧卓はまたもや閃きのままに、魔道杖の柄頭をチェスターの左足に向けて振り落とす。何の変哲もない一撃であったのに、チェスターは足の甲に強烈な痛みを覚えた。柄頭に魔力が宿って、足の甲から床までを貫通したのである。思わぬ伏兵にチェスターは驚いて、攻撃の手を緩めてしまう。
慧卓は相手に余裕を与えないかのように、そこから一気に肉弾戦へと持ち込んだ。相手の顔面を殴り付け、髪を掴んで引き寄せると思い切り、そして何度も頭突きを食らわせる。チェスターもただやられるだけではなく、錫杖でもってゼロ距離から火球を撃たんとする。しかし杖を向けた瞬間、慧卓は最初から図っていたかのようにそれを掴み取り、再度の頭突きで威勢を削ぐと、むんずとばかりに錫杖を奪った。
「もらったぁっ!!」
叫びと共に、慧卓は魔道杖を引き抜きながらチェスターをいなし、彼を地べたへと転がす。そして血だらけの相手の顔目掛けて杖を向けようとする。彼は胸中に疑いようのない勝利の確信を浮かべていた。
しか
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