第五章、その1の3:狂王の下僕
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いえた。
直線的に放たれる火球を避け続けながら、慧卓は何度も杖を振るう。その度に小さな火の玉が放たれるのだが、すべてがチェスターに届く前に相殺されて、ただの花火と化してしまう。このままでは駄目だ、もっと強い一手を考えないと。そう思いながら足の向きを変えようとした矢先、足元の瓦礫に掬われて転んでしまい、致命的な隙を晒してしまう。猛然と迫る火球を見て、慧卓は何を閃いたのか魔道杖を向けて、まるで銃を構えるかのように杖を掲げた。
『どぉん』という爆発の音が響き、幾つもの火球が弾けて噴煙が巻き起こる。チェスターは煙を見詰めながら、手応えの無さを直感し、自分の周りに新しい火球を展開する。
「・・・仕留めそこなったか。若いのに騎士だというのには疑いがあったが、なるほど、実力で成り上がったというのなら納得がいく。暫くは戯れる事が出来そうだ。
・・・だが、流石にこれは一方的だな。火球だけではどの程度この力を御し得ているか確かめられん・・・。騎士殿にチャンスをやるべきか?いや、あれに拘らずとも少し歩けば最寄りの村を襲撃できる。そこで・・・」
力を確かめるのも悪くは無い。そう言おうとした直後、『ばんっ』という炸裂音が轟き、チェスターの周りを浮かんでいた火球が全て弾け飛んだ。咄嗟に張った『障壁』のおかげで事なきを得たが、髪の毛がやや焦げてしまって変な匂いを鼻に齎してくれる。チェスターは俄かな怒りが篭った笑みで、晴れ渡る煙の奥に構える、恰好を煤けさせている慧卓を睨み付けた。構えられた魔道杖の先端からは濃密な魔力の残滓が感じられた。
慧卓は冷や冷やとした思いであったが、閃きがうまくいった事に安堵していた。魔術によって生まれた火球は何かと衝突すればその時点で爆散する。つまり火球の爆発には、ぶつかるものの質量や大きさの大小に関係が無いのではないか。その直感から、慧卓はほとんど反射的に脳裏でショットガンをイメージし、その通りに杖を構えた。その結果、魔力が散弾のように放射され・・・今に至るのであった。なるほど、もしかしたら魔術を行使するという事は、自分の想像を具現化するという事なのかもしれない。
チェスターも魔力の流れから慧卓のやった事を見抜いたのだろう。気を引き締めたように表情を硬くした。
「・・・発想がユニークだな、騎士殿。とても素人とは思えん・・・まぁ、単に魔力を出鱈目に放射していると見れば、素人らしい浅はかなやり方ともいえよう」
「余裕たっぷりに感心しやがって。気に入らねぇ・・・絶対、一泡吹かせてやるっ」
慧卓は弾を装填するかのように杖を振った。チェスターの鋭敏な感覚が、魔道杖の先端に魔力が集うのを感じた。
慧卓は駆け出す。逃走に頼る素振りなど見せず、ただ一直線にチェスターへと向かってきた。それに向かって特大の火球が襲い掛かるが、魔
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