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王道を走れば:幻想にて
第五章、その1の3:狂王の下僕
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ェスターは思わず障壁を張って足を後退させる。

「な、なんだ!?何が起きている!?」

 魔力の障壁の向こう側にある光景に、チェスターは己の目を疑う。吹き荒れる風の中心となっている慧卓の傷が、徐々に再生しつつあったのだ。紫色の芯のようなものが骨があった場所に生まれ、それを覆うように肉や外皮が構成され、元の形を作っていく。胸筋の膨らみや角ばった右肘、さらには指先に至るまでが繊細に再現されていく様は、チェスターをして不気味と思わせる程であった。これほどまでの精巧な『回復魔法』を彼は知らない。一体何が起こっているかなど、説明のしようが無かったのだ。
 そしてチェスターは思わず身を乗り出してしまう。再生されていく慧卓の胸元に、ここには存在しない筈の、狂王の首飾りが現れたのだ。

「そんな・・・あれは!?どうして、どうして奴があれを持っている!?」

 首飾りは妖しく光りながら、慧卓の胸に填まっていく。再生されていく肉が首飾りの周りを囲んでそれをしっかりと咥えこんでしまい、その上を薄い肌が覆っていく。チェスターの眼前で、首飾りは慧卓と一心同体の存在となってしまった。暴風から身を守る事したできないチェスターは、歯軋りをしながらそれを見逃すより他が無かった。
 やがて失われていた肉体の全てを、慧卓は回復する。その瞬間、閉じかけられていた瞼がぱちりと開き、慧卓は緩慢な動きで錫杖を引き寄せて、それを頼りとしながら起き上がる。その瞳は人形のように虚ろであるが、彼からあふれ出す魔力は果てしなく剣呑なものであった。

「ふ、ふふ・・・なるほどなるほど。何が起きたかはさっぱり分からぬが・・・つまりだ。まだ戦うという事だな、若き騎士殿?」

 事態を複雑に考える事は簡単だ。だが今のこの状況下、敵である慧卓が起き上がり、そして錫杖を手にした事実を鑑みれば、当然やる事など限定されてくる。即ち、義眼の魔力に身も心も委ねて、慧卓を再び打倒するのである。それこそが今の自分に課せられた新たな義務であると、チェスターは盲信した。
 足下にある魔道杖を蹴って手元に寄せる。なぜか慧卓の右手がついたままであったが、そんな事はどうでもよかった。迸る熱い感情のままに、チェスターはそれを放り捨てて勇ましく杖を構える。

「これ以上、手は抜かないぞっ!!」

 途端に、チェスターの周囲に稲妻によって作られたオーラのようなものが発生する。攻撃魔法の一つである、『雷撃の守り』である。接近すれば天然の稲妻と同じように敵を害し、ある程度の魔術的攻撃を防いでくれるものだ。チェスターの隠し玉ともいってもいいこの魔術は義眼によるものか力を増幅させて、より強力な姿で展開されていた。チェスター自身でも驚くほどに雷の密度が濃く、うっかりと触れたら肉が消失しそうなほどであった。
 対して慧卓は機
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