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王道を走れば:幻想にて
第五章、その1の3:狂王の下僕
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ク・・・無事かなぁ)

 遠大な距離の向こうに居る想い人がいつも以上に気になってしまう。彼と離れて既に半年近くであるが、淋しさと愛しさは募る一方であった。彼を想うあまり寝間着を濡らす事も多くなっており、心中で彼の存在は明らかに肥大化していた。その彼があの雪雲の向こうで、確証もないのに、一気に小さくなるような感じがするのである。もしかしたら粉雪と同じように、日光に浴びせられて呆気も無く消えてしまうのではないか。そんな思いすら感じられるのである。『召喚の契約』を結んだ相手だからこそ分かる感覚なのかもしれない。コーデリアは思いに突き動かされるように、ただただ彼の無事を祈り続けていた。
 正にその時、奇怪な事が起こる。手元にあった首飾りが禍々しい光を放ちはじめたのだ。奇妙な光を囚われていると、なんの拍子も無く、宝玉が衝撃を放ってコーデリアを寝台へと吹き飛ばした。

「きゃっ!?な、なに!?」

 コーデリアは信じられぬ光景を目の当たりとする。まるで嵐のように宝玉から風が巻き起こり、窓の暗幕をばたばたと揺らして小さな調度品や書類の束をなぎ倒しているのだ。室内に台風が発生したかのような有り得ない現象。コーデリアは風を受けながら、台風の目となっている首飾りより、今まで感じた事もないような絶大な魔力を感じる。宛ら大地の腸まで届きそうな深海か、外輪の果てを見せぬ宇宙のような、無尽蔵の魔力の塊である。その力に直接当てられたコーデリアは反射的に胸元の辺りを掴む。そこを握らねば正気を保っていられないと思えたのだ。 
 凄まじい力を誇っていた首飾りは、一瞬不吉な紫の光を放ったと思うと、虚空の一点に吸い込まれるように消失した。それと同時に、嵐のような風も最初からなかったかのように治まる。

(そんな・・・首飾りがっ・・・)

 暫しコーデリアは首飾りが消えた中空を、そして惨状を呈している室内を見詰めていた。気を取り直した時、ふと、掌に何かが握られているのを感じる。それは『召喚の契約』を契った際に消失した筈のフィブラであった。どうして、どうやって再び現れたのか。
 コーデリアは気付く。掌のフィブラが、ぶるぶると震えている事に。フィブラ自身が震えているのか、或は自分の手が震えているのか、定かでは無かった。

(どうして・・・こんなに・・・)

 コーデリアはをそれをぎゅっと胸元に押し付ける。いつまで経っても消えそうにない震えであったが、コーデリアはそれが治まると思い、フィブラを抱く。胸中にある不安も一緒に取り除いてくれると信じて。



ーーー直後、ヴォレンド遺跡にてーーー



 異変はチェスターの眼前で起こった。魔力の残滓も感じられぬ虚空から、突如として強大な魔力が湧き起ったのだ。それは霊峰の雪嵐を凌駕するほどの猛烈な風を巻き起こし、チ
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