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王道を走れば:幻想にて
第五章、その1の2:邂逅、再び
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。義眼は白目の部分は暴力的な紫に染まり、黒目の部分には魔法陣特有の複雑な模様が刻まれている。かつての狂乱ぶりを彷彿とさせるような異様な物々しさが、いたく心を惹きつけるような気がしてならなかった。その傍に浮かぶ錫杖は一見すると、鉄でできた輪形の遊環(ゆかん)が幾つもついた、ただの一本の杖である。しかし周りを囲う光が杖を中心として発している事を見るに、迂闊な評価をしていいようには思えない。あれも、義眼も、恐ろしく危険なものだと理解出来た。
 アダンの警戒心とは反対に、チェスターは嬉々として魔術の光に近付くと、しげしげとそれを見詰めている。初めて見るものに好奇心が抑えられないというより、ちゃんと魔術が機能しているか確かめているようにも見える。まるでチェスター本人とは考えられぬ程の確信のある行為であった。

「ふっ、ふふ・・・魔術で結界が張ってあるな。非常に強固だ。修業時代に教会の宝物殿で見た、龍の鱗よりも硬い。だが分かるぞ。今の私なら、この結界の解き方を知っている!!こんな杖は不要だ!!必要なのはこいつだ!!」

 チェスターは後ろにひょいと自分の杖を捨てると、光の中にぐいと腕を突っ込む。途端に、落雷のようなばちばちとした閃光が生じ始め、オーブのような結界が顕となる。圧倒的な魔術の力がアダンにも感じられた。閃光から走る稲のようなものが、床や壁に走っては玩具のように壊していく。人体に当たれば致命傷は免れない威力であり、いかに膂力自慢のアダンといっても、暴風のような魔力を前にしては顔を庇う事しか出来なかった。
 結界の中へと突っ込まれたチェスターの腕にも、何度も光が突き刺さり、衣服ごとバーナーのように焦がしていく。指先は爪と肉がごっちゃになるまで溶けており、腕は骨が見える程に爛れている。絶叫してもいい程の痛みを感じているであろうに、チェスターはまるでその素振りを見せず、狂的な笑みを浮かべたままだ。そして彼の骸骨のような手は、結界の中心を浮遊していた義眼を、がしりと掴み取った。待ちきれぬような厭らしい笑みを浮かべると、チェスターは前髪を掻き上げながら結界へと顔を近づけ、それに義眼を近づけようとする。
 何をやるのかはっきりと悟ったアダンは、荒れ狂う魔術の余波を受けながら呼びかけた。

「や、やめろっ、チェスターっ!!お前、自分が何をしようとしているのか分かっているのか!?」
「ああっ、分かっているさ!!これが正しい解き方なんだ!!私はぁっ・・・!!

 義眼とチェスターとの距離が、徐々に縮まっていく。結界の猛威に身体を焼かれながらも腕は止まらず、遂に義眼が結界を潜り、チェスターの左目に触れた。

「私はやるぞ、アダン殿!!!」
「待て、チェスター!!」

 静止に耳にを貸さず、チェスターはぐいと義眼を自分の目玉に押し付けた。白目が押され
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