第五章、その1の2:邂逅、再び
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に危機感を覚えて階段に倒れ込む。その直後、巨大な何かが遺跡に突撃し、壁や階段を大きく破壊しながら再び飛翔していった。
慧卓は破壊の惨状を見るより先に、後ろについていた筈のリコの安否が気になった。崩落した階段の先は、噴煙と瓦礫によって何も見えない。
「リコっ!!!」
呼びかけは虚しく消える。下を見ても瓦礫が落ちてゆくだけだ。無事であって欲しいものだが、それを確かめる術は今の彼には無かった。
きっとした目を空を飛翔するそれに注ぎ、そして大きく見開かれた。雲間を背にして泳ぐそれは、自分の知識と常識からは認めがたい存在なのだ。だが、そんな筈はないと頭を振ってもそれは消えたりはしない。まさしくそれは現実の光景なのだ。蛮声と共に遺跡に飛んでくる翼のついた蜥蜴。それは伝承通りの外見をした、龍であった。
「・・・ふざけんなよ。龍って何さ。伝説の話じゃなかったのか!?」
そう言いながら、慧卓は再び階段を登り始めた。急いで登りきらないと龍の攻撃に見舞われる。螺旋を一周した所で龍が再び近付いてきた。倒れこむ直前に見えた煌めき、すなわち獰猛な爪を、鳥のように立てながら。
「やっばっ!?」
ほとんど飛び込むような恰好で慧卓は倒れこむ。龍の前足が壁に突き刺さり、破片がばらばらと散乱する。凄まじい振動に揺らされながら慧卓は立ち上がった。
「そ、そんなのありかよ・・・ショーの主役とか、俺には荷が重すぎるっての!」
龍が自由を取り戻す前に、慧卓は一気に階段を上りきり、そこにあった通路の中へと駆けこんだ。すぐに龍が追い掛けてきたようだが、その足はあまりに大きく、入口を僅かに引っ掻くだけに留まった。一向に感じぬ手応えに、龍は痺れを切らしたように唸って羽ばたいていく。
一端去っていく危難に安堵しながら、慧卓はボロボロとなった通路の入口に目を向けた。例え幾分待とうとも、そこから人影が現れるとは思えなかった。
「・・・・リコ、無事だろうな?」
ともすれば・・・という一抹の不安を抱えながらも、慧卓は前に進むしかなかった。唯一の撤退路を塞がれてしまった今、眼前の道を無視するわけにはいかないのだ。
通路を進んだ先、建物のアーチの真ん中には、一台のゴンドラリフトが用意されていた。この遠大な順路の先にあるのがまさかこのようなものとは。随分な手の込みようである。狂王はかなりの酔狂な人物だったらしい。
慧卓はリフトによると、ゆっくりとレバーを倒す。滑車ががらがらと揺れてリフトが降下し始めた。久方ぶりの稼働であるのに何の支障もなくゴンドラが動くのは驚きであった。その時、『ずどん』と、頭上よりまた大きな振動が伝わってくる。龍が怒り散らして遺跡を破壊するより早くゴンドラが着いてほしいと、慧卓は心底思った。
ーーー遺跡
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