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王道を走れば:幻想にて
第五章、その1の2:邂逅、再び
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見られない広漠とした遺跡の様相と、そして遠くから迫りつつある雲海である。それら二つの景色がいっぺんに見渡せる場所といえばただ一つ、遺跡を取り囲むように作られた螺旋階段であった。慧卓達が抜けた扉は、螺旋階段の入口であったのだ。思い込みとは恐ろしいものである。一瞬とはいえ、存在感ただ一つを基準として、あれが王の間に繋がる運命の門だと考えてしまったのだから。
 リコは吹き抜ける風の冷たさや、暗い場所に長く居続けたから感じるであろう光の眩さに、まったく反応をしていない。それどころか、感じていないかのように浮ついた様子を見せていた。正常な反応を見せる慧卓とは正反対だ。

「本当に外に出るんだ・・・っていう事は、この階段を登れば・・・いよいよ王の間に・・・いよいよ、僕は秘宝を手にして・・・」
「おいリコ!!」
「っ・・・なんです、いきなり肩を掴まないで下さい」
「リコ、お前一体どうした?なんでそんなに急いている?人が変わったみたいにいきなり・・・っ」
「・・・なんですか、急に黙って」
「お前・・・左目が真っ赤に充血しているぞ?」
「え?」

 リコは思わずはっとして、自分の左目に触れようとし、静電気が走ったかのように指を離して顔を顰める。それは目からくる頭痛に悩む表情であったが、しかし不自然さを感じずにはいられなかった。それがまるで痛みを『思い出した』かのような反応に思えたからだ。とても常識から考えられる反応ではなかった。
 足場の覚束なさにビビりながら、リコの苦悶を心配しようとした・・・その時であった。 

 ーーーッッッッ!!!!!

 突如、大気や大地を震撼とさせる凄まじい咆哮が耳を突いた。思わず耳を覆って身体を埋めたくなるような大蛮声。錯覚によるのだろうが、遺跡の軒並みが震え、宮廷もが振動しているようにも感じられる。あたかもその蛮声を歓迎しているようにも思えた。
 慧卓は目をしばしばと瞬かせて天を仰ぐ。雲行きが怪しくなってきただけで、蛮声の出所は見られない。遠くの空を探す慧卓とは対照的に、リコは遺跡の頂上を見遣り、愕然としたように目を見開いていた。目端がぴくぴくとひくついて、隠しきれぬ畏怖の瞳を『それ』に送っている。今生最大の命の警鐘が、彼の心中に鳴り響いていた。

「・・・ケイタクさん、走って。早く先に行って!」
「え!?」
「いいから早く!!」

 急かされるように慧卓は螺旋階段を登らされる。不思議に思って振り返ろうとした瞬間、再び、あの大蛮声が轟いて身体を震わした。声はほとんど真上から轟いたように聞こえて慧卓は仰ぎ見ると、尾っぽが長く翼のついた蜥蜴ようなものが空に羽ばたくのが見えた。それは遺跡の陰に隠れると、悠々と旋回して一気に接近してくる。その巨体さと異様さが近付いてくるのに、慧卓は動揺し、きらりと光った何か
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