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王道を走れば:幻想にて
第五章、その1の2:邂逅、再び
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風が流れ込んできている。それが扉の存在を誇示しているようで、まるでこれが王の間に繋がる入口のようにも思えてしまう。

「・・・遂にか」
「ええ。遂にここまで来たんです。この奥。絶対に何かがあります。十中八九、僕たちが求めている遺跡の宝物ってやつでしょう」
「・・・なんかさ、リコ。俺よりやる気があるように見えるんだけど」
「だって、ここまで来たんですよ?古い遺跡の最深部にまで。なんかこう・・・胸がドキドキするんです。分かりますよね?まだ見ぬ新世界や、冒険が待っているような感じがして・・・なんかじっとしていられないんです」

 扉を前にしたリコは落ち着きが無く、ソワソワとして弛んだような笑みを浮かべていた。普段の理性的な面立ちが消えて童心に帰っているように見える。たった数時間別れただけでこの変化は奇妙であるように感じたが、慧卓は疑問には思わなかった。

「年頃って事かな。・・・一応確認するけど、ここって正しい道だよな?」
「当り前じゃないですか。ここで行き止まりなんですよ?他の道は五分は歩かないとありません。それにさっきの石版!大事な場所じゃ無ければどうして刻むんです?間違いなく僕達は順路を辿っているんです」
「はいはい、落ち着けって。ちょっと興奮しすぎだ。飯でも食って落ち着けよ。ほら、非常食の干し肉が余ってるからさ。さっき下水道で尻に敷いちゃったけど」
「結構です。・・・ってか下水道を通って来たんですか」
「ああ。身体が鼠臭いだろ?」
「知りませんよ、そんなの」

 つれない返事だなぁ、と慧卓は苦笑を漏らし、扉に手を掛ける。

「んじゃ、さっさとこれを開けようか。待っててくれたんだろ?」
「ええ。僕一人じゃ力が足りなくて」
「そっか。んじゃ、1,2でいくぞ。いいな?1・・・2の・・・」
『さんっ!!』

 うんうんと唸りながら、肥えた牡牛の何倍も重たいであろう大扉を押す。ぎぃぎぃと音が鳴るだけでほとんど手応えが無く、初めは数センチ程度しか開かなかった。しかし何度か繰り返していく内に、漸く身体を通せそうな隙間が出来上がる。汗だくの身体をその内へと入れて、慧卓は息を吐いた。

「いやぁ・・・一苦労だったなぁ・・・っておい、リコ!どこへ行く?」
「分かりませんか?ケイタクさん。風です」
「うん?」
「風ですよ。奥から吹き込んでます。たぶんこれ、外に繋がっているんです・・・行かないと」
「おい、だから先走るなって!!」

 返答もせずにリコは早足で奥へと突き進んでいく。その足は段々と駆け足となっており、慧卓が追いつくには僅かながらも時間が掛かってしまう。リコに追いついたのは通路の薄暗闇から、外界の光り輝く世界に飛び込んだ時であった。
 思わず光に眩みながら外を見る。目の前に広がるのは生き物ただ一匹の気配も
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