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王道を走れば:幻想にて
第五章、その1の1:ヴォレンド遺跡
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要なわけだ」
「例の、聖鐘を襲った一団ですか?」
「ああ。奴等もヴォレンド遺跡の宝を狙っている。あいつらより早く向こうに着かなきゃならない。けど、機を誤っては駄目だ。天気が晴れていないと厳しいだろうな」
「さらに言えば、遺跡が盆地みたいな場所にあるせいで、山風が厳しいらしいんです」
「マチュピチュみたいな場所じゃないって事か・・・あ、こっちの話」
「まぁ何にせよ、天気の酷い日に行くべきじゃありませんよね。凍えちゃいますし」

 まさに指摘の通りだ。ここから先は然したる障害物は無いが、遺跡に着いたら着いたで何も発見できずに、立ち往生する可能性も考えられる。行きの心配も大事であるが、それ以上に帰りの心配をするべきであった。こんな場所で死ぬなど、それだけで悔いても悔やみきれない事なのだから。
 ベルの首を撫でてながら景色を見渡していると、ふと、後ろから足音が近づいてくるのが分かる。集落の人と同様に厚着を着たソツであった。

「ケイタク様。既に起きていらっしゃいましたか」
「あっ、ソツ様。すみません、寝起きの癖にこんな自由気儘に動いてしまって。どうしても大自然の美しさに触れてみたかったので」
「そうでしたか。お気に召していただけたのなら、この集落の住人として、何よりの嬉しい事です。さぁ、祈祷師様の下へ向かいましょう。あなたの未来について語りたいそうなので」
「分かりました。じゃ、悪いけどリコ、ベルを任せていいかな?」
「御安い御用です。いってらっしゃい」

 愛馬の顔を何度か撫でてから、慧卓はソツの後に続く。何軒かの家を通り過ぎた後、トーテムポールのようなものを両脇に置いた家の前に着いた。衛兵が短槍を持って護衛している。

「Quo'ddm Mizaj, Sotu.」「Ka.」

 ソツが衛兵に話すと許しが得られたのか、慧卓は家屋の中へと通される。途端に御香のようなつんとくる臭いが鼻を突く。
 屋内は中々の様相であった。明りは奥の祭壇らしきものにあるだけで薄暗い。動物の皮を剥いだものが壁にかけられ、兎の頭蓋骨らしいものが砕かれて瓶に収まっている。草木を散らしたような模様の赤い絨毯が敷かれ、家の奥に一人の老女が座っている。祭壇には幾つも焼香のようなものが焚かれ、これが臭いと共に灰色の薄い煙を上げているようであった。

「此方が祈祷師様です。ケイタク様、あなたの未来を占い、その吉凶の兆しを予言して下さる方です。私も予言を受けておりますが、どれも身に覚えのあるものばかり。信頼を置いてまず損をする事は御座いません」
「そうなんですか?あの、祈祷師様、私の未来を占っていただけると聞いたのですが」

 返答は無かった。幾秒かの沈黙の後、老女は燭台と刻んだ香草が入った取り皿を取って、慧卓に振り向く。皺だらけの彫りの深い女性であっ
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