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王道を走れば:幻想にて
第五章、その1の1:ヴォレンド遺跡
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、獣の皮からこしらえた分厚い衣服を纏い、靴は雪にすくわれぬように確りとした造りになっている。家屋の傍には寒さに強い牛が『もぉ』と鳴いており、また見た事も無い動物も柵の中にいた。それは頭部は山羊で、身体はデブいラクダ、二股に分かれた尻尾をゆさゆさと揺さぶり、『ゲェッ』と引き攣った鳥のような声を出す。まるで『寒くてやってられない』といわんばかりの声色であり、アンバランスな外見に似合わず微笑ましいものであった。
 慧卓はそれらの様子を愛馬とリコと共に見て回り、新しいものを見ては思うが儘に感想を述べていた。

「ゲェだって、ゲェ。腹を殴られたみたいな泣き声だな」
「『ボーボ』って言うんですって、あれ。春になると毛だらけになって毛玉みたいになるから」
「へぇ・・・顔を埋めてみたいなぁ。こう、ぎゅぅって」
「駄目ですよぉ。あれで結構、お肌に敏感な生き物なんですって。ぎゅぅってしたら足蹴にされちゃいます。ちなみにそれでタマタマを潰された方が村にいるそうで」
「タマ・・・じ、冗談だって、冗談、抱き付いたりしないって。・・・にしても、特別ここら辺って寒い訳じゃ無いなぁ。この村って山腹にあるんだよな?大体どのあたりに位置するんだ?」
「峰の一番高い場所から数時間ほど降りた所です。普通に山道を通った場合、回り道やらなにやらで、二つ目の山から此処まで二週間は掛かるらしいんです。ですが村の方々が作った秘密の洞窟のおかげで、慧卓さんが倒れた場所から此処まで、たった数時間で移動できるんです」
「すげぇ短いな。秘密の洞窟って何だ?」
「天然の洞窟ですよ。山の中をくり貫くように広がっていて、そこを通れば態々山頂を越えなくても、白の峰をほとんど超える事が出来るんです。ただ、たまにラプトルの群れが冬越しのために根付く事があるので、頻繁には利用できないらしいですが」
「地元民しか知らない抜け道か・・・もっと早く知っていれば、俺も熊とランデヴーする事は無かっただろうな」
「一生の思い出になりましたね?」
「そうだな。生の熊を見たのは最高の経験だったよ。おかげで死にかけた」

 そう言いながら、二人と一頭は西の山々を臨める場所に着く。箒で払われ削られた様に広がる谷間に一本の大きな清流があり、それを辿っていくと二つの山が見える。あの向こうには、目的の場所である『ヴォレンド遺跡』がある筈であった。 

「リコ。ヴォレンド遺跡ってどこら辺だ?」
「あの山間部を越えた先らしいです。ほら、あの小さな小川が見えるでしょう?あれを遡っていって谷間を抜けます。それで双子山と呼ばれる二つの山の間を進んでいくと、遺跡を見ることが出来るそうです」
「だが山間部を抜けるにはどうしても川を越える必要がありそうだ。なるほどねぇ・・・あいつら、こんな厳しい道を歩こうとしてたのか。そりゃ人手が必
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