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王道を走れば:幻想にて
第五章、その1の1:ヴォレンド遺跡
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な眼差しを受ける事となった。コーデリアは本を机に置くと椅子から立ち上がり、宝飾品などを仕舞っているドレッサーへと向かい、一番下の大きな引き出しを開けた。上品な樫の箱を取り出すと中身をミルカに見せる。それは旅立ちの日に慧卓より頂いた、美しい紫の宝玉の首飾りであった。

「これが、秘宝だと言うのですか?」
「少なくともレイモンド様はそう疑っております。それがもしかしたら、『狂王の首飾り』ではないかと」
「・・・いつそう疑ったのです?」
「三日前の宴から帰る途中、あなたが姉君・・・下の方の姉君の墓前で、それを身に着けているのを見たらしく」
「ふふ。あのレイモンドとあろう者が、たかが伝承を真に受けているのですか?常識を疑わざるを得ませんね」
「レイモンド様の名誉にかけて申しますがっ、これはあの方が考え付いたものではありません!全て、マティウス様が申されていた事であって、あの方は仕方なくそれを聞き入れているだけです!」
「・・・本当にそうなのですか?」

 ミルカは言い澱み、悔しげに閉口した。彼とて自分の主が考えている事、すべてを把握している訳では無いという訳なのだろう。若き従士の懊悩に手を貸してやりたい所だが、それは兎も角として、一つ彼の主張より分かる事があるとすれば・・・。

「・・・執政長官がこれを所望していると言いたいのですね」
「はい。それがあれば、憂いは無くなると」
「憂い、ですか。執政長官の憂いがこの首飾り一つを渡すだけで解決するならば、喜んで手を貸したい所です。ですが渡せません。これは私の大切な方より頂いた物です。私の誇りを掛けて、これは私が所持いたします」
「・・・だと思ってました。いいですよ、無理に取ろうとまでは考えていませんし、そう命令を受けた訳でもありませんから」

 コーデリアは虚を突かれたように一瞬ぼぉっとし、疑問符を頭に掲げた。もう少し首飾りについて追求されたりすると思っていたのだが。 

「・・・やけにあっさりと引くのですね」
「だってそれ、コーデリア様が渡す訳無いじゃないですか。想い人からの大切な贈り物を」
「ま、まぁそうですけど」
「ちょっと気に入らない人ですけど、まっ、あの人が嫌いってわけじゃありませんからね。進んで恋の御邪魔虫になろうとは思っていません。僕たち部外者は」
「そうなのですか・・・」

 どこか腑に落ちない感じがする。あの冷徹な御人がどうして憂いを放置するような真似をするのか。何か魔が差したという訳でもあるまいに。とかく、人間の心の機微というものは時折分からなくなる事がある。今少し精進が必要だとコーデリアは思った。
 また、慧卓が自分が思っていたよりも他の人達と仲良くしている事に安堵する。コンスル=ナイトは異界の人間という得体の知れぬ不穏分子を毛嫌いしているという風
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