第五章、その1の1:ヴォレンド遺跡
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免です」
「分かったって。気を付けるよ」
軽口を交えて、慧卓は宮殿の側面へと足を向けた。嘗ての繁栄の証だろう、綺麗に整備された水路を越えると、漸く別の入口が見えてきた。といっても、そこも風化によって壁が崩れているだけなのだが。
中に入り込むと、閑散とした薄暗い廊下が広がっていた。左手は宮殿の本来の入口だが、巨像の臀部らしいものが道を塞いでいる。遠回りかもしれないが、右手に行くしかないようだ。そうして足を進めようとすると、ふと壁に書かれた絵に目を奪われる。時の経過に抵抗するかのように、それは薄れつつも全体を確りと残していた。天を仰ぐ老人と、それに舞い降りる巨大な龍の姿を。
「・・・龍、か」
祈祷師の言葉が脳裏に過ぎる。嫌な予感が胸のあたりで再びざわつき始めた。慧卓はそれを振り払うように頭を振って、薄暗い廊下をつかつかと歩いていく。
遠く、遺跡の外から、低い嘶きのようなものが響いてきた。それは雷のようでもあったが、同時に、龍の咆哮のようにも聞こえた。
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