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王道を走れば:幻想にて
第五章、その1の1:ヴォレンド遺跡
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の卓越した視力が何かを捉えた。慧卓は目を凝らしてやっとの思いでそれを見付けた。大通りの真ん中を、何かが動いている。熊でもラプトルでもない。あれはまさしく・・・。

「人影?こんな辺鄙な場所に?」
「・・・もしや以前話してくれた、例の一団とやらでは?」
「だとすると拙いな。リコ、確り掴まれよ!!」

 馬に鞭を打って大通りを疾走する。久方ぶりの疾駆とあってかベルは喜ばしげな様子で風を切っていた。瓦礫や石ころを避けながら進むが、倒壊した石像のせいで迂回せざるを得なくなった。安全な道を通って大通りに戻った頃には、その人影は見えなくなっていた。既に宮殿の中へと入ったのだろう。

「くそ、先に入りやがった」
「気を付けて進みましょう。塀が崩れかかっている」
「分かっているよ」

 更に馬を走らせて、宮殿の入口にあたる正門へと辿り着いた。ここから先は瓦礫が散乱しているため馬では進めない。ベルを門の近くに留めると、二人は急ぎ足で宮殿へ進もうとした。廃棄場のコンテナよりも大きな石壁を避けた所で、いきなり目の前に怖ろしい男の顔が現れた。

「あらぁっ!?」

 それはただの石像であったが、慧卓には効果覿面であった。思わず吃驚してずっこけた拍子に、慧卓は傍に立っていた別の巨像にしがみつく。『ピシっ』という音がして巨像の足に罅が入ったと思うと、重厚な響きを奏でながら像は横向きに倒れて行った。その像の頭がまた別の像の足を砕くと、それはぐらりと倒れ掛かり、また別の像が・・・といった具合にドミノ倒しに像が倒壊していく。二人して唖然と見詰める中、巨像は宮殿に伸し掛かって『どぉん』と大きな音を鳴らし、壮麗な外壁に見事な破壊の刻印を示した。

「・・・今の崩れ方、芸術性を感じます。数理の法則にどこまでも従順な、鮮やかな崩壊です。美しい」
「・・・なんにせよ、これであいつらにも、俺等が居るってことが伝わったな」
「ええ。でも一つ問題があります」「なんだ?」
「今の崩壊で宮殿への入口が塞がりました。どうしてくれるんですか」「あー・・・」

 リコの指摘の通り、倒壊の御蔭で宮殿の入口が瓦礫によって塞がれてしまったようだ。近付いて確かめてみると、小柄な者ならば入れそうなくらいの小さな穴があるのに気付く。丁度、リコの体躯にはピッタリであった。
 一つ頷くと、リコはその中へうんしょ、うんしょと身体を入らせていく。そして瓦礫のとんがりに痛がりつつも、遂にその奥へと身体を通らせる事に成功した。

「リコ、中に入れたか?」「ええ、何とか」
「よし。それじゃここからは二手に別れよう。お前は真っ直ぐあいつらを追ってくれ。俺も別ルートですぐに追いつくから、それまで無理をするんじゃないぞ」
「ケイタクさんこそ、軽率な行動は慎んでくださいよ。さっきみたいのはもう御
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