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王道を走れば:幻想にて
第五章、その1の1:ヴォレンド遺跡
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と大差無いほどの通りが街を貫いており、街路樹代わりに巨像が立ち並び、それが向かう先には巨大な宮殿が佇んでいる。
 まるで神の意志を告げるような大きな建物は、優にビル七階建てに近いほどの高さを誇り、アンコールワットやクレムリン宮殿を想起させるような、丸い屋根をいただいている。そしてバベルの塔の傲慢さを想像させるように、螺旋状の階段が建物途中から現れて、小さな庭園を通りながら一番高いフロアへと繋がっていた。ここに住んでいた当時の住人は、あの宮殿を見るたびに狂王の奇行・暴虐を畏れたのだろう。周囲の険しさから逃げる事も適わず、ただ嵐が自分に振りかからぬよう祈り続けたのだろう。何という歪さだろうか。時代や場所にそぐわぬこの異様さこそ、ヴォレンド遺跡の最大の魅力なのかもしれない。
 だが自分は観光者ではない、騎士だ。任務遂行のために風景に見惚れる事は出来ない・・・非常に悔しいが。それよりも懸念事項に目を向けねばならない。遺跡の向こう側の空からゆっくりと、しかし着実に近付いている厚い雨雲についてであった。以前見舞われた豪雪の時も、あのような雲が空に掛かっていた。これは早々にケリをつけて集落に帰らないと、重大かつ緊急の帰宅困難者になる恐れがあった。これに『絶望的な』という修飾語が付かぬよう努力する必要があった。
 リコは遺跡の姿に暫し惚けていた様子だったが、気を取り直すと、懐から小さな獣の皮を取り出す。そこには何やらマークのようなものが刻まれていた。

「そいつは?」
「集落の人から地図をもらったんです。まぁ、精巧なものじゃないですけど。・・・よし、行先が分かりました。あの宮殿みたいな建物。あそこが嘗て狂王が住んでいたという場所です。恐らく残りの秘宝はあそこにあるでしょう」
「あそこに、義眼があるのか・・・。遺跡までどれくらいかかると思う?」
「ざっと見て、一刻ですね。御昼までには到着するでしょう」
「案外早いな。ピクニック用のサンドイッチでももってくりゃよかった」
「それはまたの機会にしましょう。さ、行きますか」「あいよ」

 馬は麓を越えた。転ぶ心配の無いなだらかな斜面を降りていく。高みから見えていた遺跡は一度木々の中に隠れ、暫し歩いた後、いきなり高度を下げたように目前に現れてきた。壊れたブロック塀のように石壁の名残が散乱しているのが分かる。家屋が痛々しい姿を見せているのが分かる。リコはそれらを見て納得できないとばかりに頸を捻った。

「・・・なんだかなぁ」
「どうした?」
「いえ、伝説や伝承だと、もっとキレイだって言ってましたから」
「まっ、遺跡の駐在管理人が居ないからな。不変の存在ってわけじゃないんだ。劣化もするし、崩れたりもする。太陽みたいに輝いたりはしないな」
「まぁそうなんですけど・・・ん?ケイタクさん、あれ」

 リコ
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