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王道を走れば:幻想にて
第五章、その1の1:ヴォレンド遺跡
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へと転がっていったと」「まさしく」

 コーデリアにとっては嬉しき話題であった。これによって王国の悪しき所が改善されると確信していたからだ。残りが組織の設立だけならば、後はブルーム郷が上手くやってくれる。そう彼女は信じていた。

「それで?」
「・・・それで、とは?」
「執政長官の遣いたるあなたが、ただ一本の法案が成立すると報せるためだけに、私の下に来た訳では無いでしょう?本題はなんです」
「・・・此方を見ていただきたいのです」

 ミルカはそう言って、コーデリアに一冊の古い本を差し出した。受け取ったそれの題名を見て、コーデリアは苦笑を漏らさずにはいられない。それは彼女が幼少期に怯えながら読破した、一冊の本だったからだ。

「・・・また随分と古いものを持ってきましたね。『北方の狂王』とは」
「殿下も知らない筈はありません。教養のある者ならば誰もが知っている。とある王が敷いた恐怖政治の過程とその末路を描いた物語を」
「ですが学説曰く、『現実にはあり得ない創作性が散見するため、事実的根拠に乏しい』。『歴史的資料と見るには問題がある』と窺っております」
「ええ。一般の歴史学者ならそう言うでしょう。何せ、三つの秘宝なるもので幾万もの臣民を支配するなど、現実味がまるでありませんからね。本当にその秘宝が存在しない限りには」
「・・・あると、言いたいのですか。その秘宝が」
「栞が挟まれてあるページをご覧ください」

 ミルカの言葉に従って、本の半分を過ぎた所を開く。そこは幼き頃、コーデリアが本の中で最も恐れた部分の一つである、禁断の道具が記されていた頁であった。その禍々しく得体の知れない魔術の効用と、それに操られる人々の奇行に恐怖して、夜な夜な悪夢を見ては早朝に冷たい思いを感じていたものだ。その度に泣きかけてしまい、アリッサやクィニの手を煩わせるのが何よりも恥ずかしく、姉君によく抱き付いたものであった。あの時の呆れたような、しかし柔らかな慈愛の笑みが今となっては懐かしく思える。

「・・・あの、王女様?」

 ーーーいけない。感傷に浸っていては。

 目前に立つミルカの訝しげな視線に取り繕うような微苦笑を返しながら、コーデリアは改めて頁を見て、眉を顰める。そこに書かれている首飾りの形状に強烈な既視感を感じたのだ。幼少の頃でもなく、最後の王女になった時にでもなく、慧卓と出会った後である今でこそ感じる違和感だ。

「苦労しましたよ。文章だけなら兎も角として、挿絵がついているものが必要だなんて。おかげで王立図書館の禁書の書架を探す羽目となりました。見つけるのに三日も掛かりましたよ」
「・・・」
「私が何を言いたいのか、察していただけると有難いです。恐縮だとは思いますが」

 文面から目を離して面を上げると、ミルカの真剣
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