崑崙の章
第16話 「俺の名は左慈。管理者だ」
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囲を見渡しても円形状の石畳の間で、およそ四、五十m程度の広さがあった。
縁の欄干には申し訳程度の柵があるが、その先は断崖絶壁で、下がどうなっているのか全く見えない。
石を落としても音すら届かないであろう上空にいることは、容易に想像できた。
「ここは……?」
「武舞台みたいなもんだ。ここで死合うぞ。水は飲んだか?」
「……ああ」
そう言って、盾二は左慈に空の竹筒を投げる。
そして、腕や足の柔軟をすると感心したように息を吐いた。
「まるで仙○だな……体の不調が嘘のようだ」
「一応、不老長寿の水だからな。飲めば病はもとより、肉体欠損すら治るらしい。試したことはないが」
「……試してないのにわかるのか?」
「于吉が言っていた。あいつはどうしようもないやつだが、嘘はいわん」
信頼しているのか、馬鹿にしているのか……盾二にはよくわからなかった。
だが、身体の調子はすこぶる良くなっていることだけは確かだ。
「さて、前もって言っておく。俺は真剣勝負が好きだ。だから本気でいく。死んでも文句言うなよ」
その言葉に、盾二が呆れた声を出す。
「……まあ、番人として力試しなら当然だが、そこは死にたくなければ〜じゃないのか?」
「俺は于吉程、達観しているわけじゃないんでな。恨み募る北郷一刀……その同存在のお前相手に、手加減する気はない」
「どんだけ嫌われてるんだ、一刀のやつは……」
嘆息しつつも、AMスーツを整え、力を込める。
バンッ、という音とともに、人工筋肉が肥大化する。
「噂のAMスーツか……そいつのことは、于吉から聞いている。その戦い方もな……」
左慈は、暗にAMスーツ無効化の拳『浸透撃』をほのめかす。
それは朧が得意とし、御神苗優や大槻を散々傷めつけた、AMスーツ使いのスプリガン殺しの技だった。
「ああ、やっぱり……仙人だもんな。当然、使うよなあ……怖い怖い」
「徒手空拳でいいのか? 別にナイフ使ってもいいんだぞ?」
「いや……ナイフってやつは、殺傷力はあってもその分、手数が限られるしな。なまじ武器に頼るとすぐやられるんだよ……朧で実感した」
「朧……お前らの世界の仙人か。では、そいつに負けるわけにはいかんな」
「見たこともない相手に対抗心を出さないでくれよ……」
互いに軽口を言い合うが、目と殺気だけは徐々に鋭くなってゆく。
じりじりとした、すり足で間合いを詰めること数十秒。
双方ともに軽口はなくなり、その間合いが触れ合う瞬間。
互いの目が鋭く光る。
死闘が、始まった。
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