崑崙の章
第16話 「俺の名は左慈。管理者だ」
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
向けになった。
(く、空気が……酸素がこんなにうまいなんて……)
七日ぶりの地上の空気。
過呼吸になり気味な肺をコントロールしつつ身体を休める。
久々に何も考えずに仮眠して、体調を整えること二時間ほど。
ようやく手足の感覚も、元に戻りつつあることを確認し、起き上がった。
凍りついていた麻袋も、すでに溶けてビシャビシャだった。
その中から、溶けた玄米をポリポリと食べる。
(こんなに溶けて水浸しでは、もう保存も効かないな……帰りはどうするか)
正直、残りのクッキーだけで山を降りることはキツイかもしれない。
俺は洞窟の奥――暗闇の先へと目を向ける。
「鬼が出るか、蛇がでるか……」
俺は、腰のナイフを確認しつつ、奥へと探索する。
だが、洞窟内部の折れ曲がった場所を覗くと――
「……ん? もういいのか?」
「……は?」
その場には、一人の男が仁王立ちしていた。
それも、曲がり角のすぐ先で。
「……………………………………」
「………………………………え、えーと?」
お互い無言のまま。
思わず呆けた俺が、トボけた問いかけをしてしまう。
だってそうだろう。
俺はこの洞窟に入り、二時間ほども仰向けになっていたのだ。
その前は、この洞窟の前でかまくらを作ってビバークもしていた。
ゆえに、こいつがずっとここにいたのなら、半日近くもの間、こいつはここで俺を見ていたということになる。
声すらかけずに。
……………………なんか、自分で整理して無性に腹が立った。
「……………………」
「あの……あんた、だれ?」
仁王立ちしている男は、俺の問いかけに胡乱げに俺を見ながら首を傾げる。
男は、この雪山でも軽装な風体で、立ち尽くしている。
ローブのようなものを羽織っているが、どう見ても雪山にいるような風体には見えない
「俺が誰、だと? お前……于吉から何も聞いていないのか?」
「は?」
男の言葉に、俺は間の抜けた返答をする。
「いや、俺は于吉に『山の八合目付近にある巨大洞窟の中まで辿り着ければ、そこに賢者の石がある。そこに辿り着けるかが試練だ』としか……」
「…………っんの、メガネ衆道家め。俺に全部押し付けたのか!」
俺の言葉に、怒りを顕にする男。
いや、俺に怒られてもな……
「ちっ……まあいい。その状態じゃ万全に戦うこともできんだろう。ついてこい」
そう言って奥へと歩いていく男。
「ちょ、ちょとまってくれ! あんた、一体誰だ!?」
「む? ああ、それすら聞いていないのか……ったく」
立ち止まり、盛大に溜息をつく男。
なにそれ、俺が悪いのか?
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ