崑崙の章
第16話 「俺の名は左慈。管理者だ」
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(温度もそうだが……この酸素の薄さもきついよな。訓練を受けているとはいえ……)
低酸素濃度下での訓練は、必須で受けている。
スプリガンは、その性質上、山奥や谷底、深海など人が入り込めないような場所に行くことがほとんどだ。
ゆえに俺達のような装備を与えられているスプリガンは、その殆どが危険な場所への探索任務につく。
初代AMスーツ使用者の御神苗優先輩は、全世界を飛び回って山だろうが森だろうが制覇しているし、大槻とて深海や宇宙まで行っている。
だから様々な特殊訓練も受けているし、そういった資格もあるが……
さすがに今回はきつい。
ここ一年、普通の場所で普通に戦い、おまけに数ヶ月前は自室に篭って基礎体力以外は全部政務に当てていた。
有り体に言えば、鈍っているのだ。
(こんな時、ティアさんがいればな……魔術でどうとでもしてくれそう……いや、してくれんな。あの人意外にサドだし)
本人がいれば、おしおきに式神をけしかけられそうな気もするが……
そんな益体もないことを、目の前で弱々しく燃える燈火を見ながら考えている。
(俺……なんで、こんなこと……してい……だっ……け……)
その瞼が、重く……
『寝たら死ぬわよん! アタシの体で暖めてア・ゲ・ル♪』
「ギャーッ!?」
思わず叫んで飛び起きる。
しかもその拍子に、かまくらを突き破ってしまい、風よけのかまくらが見事に潰れる。
「ぺっぺっ……あ、あれ?」
雪から這い出ると、すでに吹雪は去っており、見事な朝焼けが東の空から登っているのが見える。
どうやら気づかぬうちに、気を失っていたようだ。
(あ、危ない危ない……)
俺は周囲を探って、雪の中から荷物を取り出すと、再びそれを背負った。
そして朝日を拝みつつ、呟く。
「……なんかこの世のものとは思えない、とんでもないものを見た気がする」
覚えていない悪夢に吐き気を覚えつつ、山の頂上を見ようとして……
「あ……」
その目の前に、昨日は全く見えなかった洞窟を発見して、俺は荷物を取り落とした。
* * * * *
「……ここか」
そう呟く俺は、よろよろと洞窟の中に入って、不意に気づく。
(……!? 外からの冷気が入って来ない、だと?)
洞窟の中と外。
その境目から気温が激変したことを、顔の肌で感じる。
空気は、日陰特有の若干湿り気を帯びた感じはあるものの、外と内とでは濃度自体が違う。
常に過呼吸を強いられていた外界と違い、この中は地上と何ら変わらぬ濃度に、俺は濃い酸素をむさぼるように吸うと、その場に仰
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