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短編集
ありがとう、って。
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気持ちがいい笑顔をして、ありがとう、と。
「……ふ」
 小さく息を吐く。過去と今との差が激しい。もう、こんな毎日を続けるのは嫌になってしまっていた。これを続けることが苦痛だ。続けられていけても、変わってしまった自分が恐ろしい。いっそのこと、明日から私がいなくなれば、こんなこと思わなくてもいいのに。
 そこまで思って、小さく笑う。会社を休んでどうするのだ。暮らしてはいけない。
 じゃ、生きなければ?
 それこそ失笑してしまう。生きるために苦行を犯し、逃げるために死を選ぶなんて……
「あれ?」
 なんて当たり前なことを?
 そうだ、生きるということには苦痛が付きまとう。では逆は?
 今まで何でも努力してきた自信はある。逆も、やってみようか。
 明日の会社は、無断欠勤だ。場所は、あの神社でいいだろう。


 翌朝、ベッドから起きると、もう日はかなり上っていた。七時八時ではもう既に無いだろう。床には、六時を指して止まってしまった目覚まし時計が、その白い筐体にヒビを入れて転がっていた。そういえば、今日は時間に縛られまいと思って、かけたままだった目覚まし時計を壁に投げつけたのだった。よもや壊れてしまうとは。
 起きてからは、はじめに朝食をとることにしていたが、今日は気分を変えてみようと思い、身支度をした。ゆっくりと一時間以上をそれにかけ、意気揚々と荷物を入れたバッグを肩に掛けて玄関に向かった。壁掛け時計は、既に十一時を指していた。
 駅に向かう途中、以前から気になっていたパン屋によって、美味しそうなパンを五つばかり買っていった。以前からと言ってももう一年以上も前からで、気にはなっていたけどテンプレートに従っていた毎日では買いに来ることもなかったのだ。
 駅について電車を待つ途中、一つを食べた。半月状のカレーパンで、辛味が少なく食べやすかった。
 今気づけば、朝起きてから携帯を確認していなかった。何気なく開いて、後悔。上司からの電話が何通か入っている。伝言なんて、何を言われるか決まっている。開かないに限った。

 家の最寄り駅から四つ程離れた駅に降り立つ。この駅の直ぐ傍に、原下田神社があるのだ。
 駅舎から出て、直ぐ前の道路を右に曲がり、次の交差点で左。時間にして、都合十分程で目的の神社についた。早速鳥居をくぐる。昔ここに来た際に、誰かに言われた真ん中を通ってはいけないという言葉を思いだして。
 長い石段を登る途中、気づけば前から女性が降りてきてた。歳は私とあまり変わらぬ年齢だろう。あまり長く見るのも悪いので、視線を外す。彼女は私の横を通り過ぎる時に、何故かちょっと吃驚して私を見た。だが彼女は何も言わず、そのまま過ぎ去る、かに思えた。
「すいません」
 後ろから声をかけられた。振り返ると、当たり前だが先ほどの女性。
「ここか
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