第九章 双月の舞踏会
第七話 スレイプニィルの舞踏会
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分をジッと見つめるカラスの姿。部屋の窓は閉まっている。何処から入ってきたのかと首を傾げたタバサの前で、そのカラスは左右に割れた。
だが、二つに割れたと言うにも関わらず、机の上に倒れるカラスからは血の一滴も流れない。
机に近づいたタバサは、その理由を知る。
カラスはカラスでも、それはどうやら精巧に作られた模型であったようだ。二つに分かれたそのカラスの模型の中は空洞であり、タバサはそこに一枚の手紙を見つけた。
送り主は分かっている。
今日のようにガーゴイルというのは初めてだが、ガリア王家からの密書であると。
窓から差し込む朝日で手紙に目を通すうちに、タバサの顔が微かに動く。
手紙に書かれていたのは、呼び出しの文章でもなければ指令でもなく、トリスタニアのとある酒場の名前が書かれていた。
その日の夜。
タバサは自身の使い魔であるシルフィードの背に乗ってトリスタニアまで向かった。
夜の闇に対抗するように明かりが灯る場所の上空からシルフィードから降りたタバサは、ゆっくりとレビテーションで地上に降り立つ。夜に明かりが灯る場所は少ない。夜番をする王宮の兵士以外では、いまタバサがいる歓楽街ぐらいだろう。タバサが降り立った場所は、トリスタニアにいくつかある歓楽街の一つであった。
素面であれば、一目で貴族と分かる者に声をかける者はいないだろうが、酒の勢いとタバサの小柄な体つきに、通りを歩く酔っぱらいが口々にからかいの声を上げる。
タバサは酔っぱらいの声が聞こえないかのように通りを歩き、指定された酒場に向かう。
指定された酒場は、通りの中で見た中では、小奇麗な印象を受ける店であった。店に入ろうとする者の中には、下級だろう貴族や騎士と思われる者たちの姿も見える。そんな中に混ざるように店に入ったタバサは、ジロジロと不躾な視線を受けながら黙ってカウンターに向かう。
「貴族の子供が来るような場所じゃありませんぜ。大事になる前に帰っちゃ如何ですかい」
カウンターに座ると、店の主人と思われる男が脅すようにギロリとタバサを睨みつける。しかし、タバサは軽く首を横に振るだけで席を離れようとはしない。
「魔法にいくら自信があったとしても、ここいらにゃあ魔法が使えるゴロツキもすくなくねえ。怪我しないうちに帰んな」
忠告とも脅しともつかない言葉を、睨みつけながら店主が口にした時、
「ご忠告ありがとうございます。でもこの子は心配されなくても大丈夫ですわ」
ローブを深く被った女が何時の間にかタバサの背後に立っていた。
店主はまるで湧いて出てきたかのような女の姿にビクリと背を震わせると、長年の勘から危険だと判断し黙ってその場から離れていく。
「お待たせしました。北花壇騎士タバサ殿」
フー
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