第九章 双月の舞踏会
第七話 スレイプニィルの舞踏会
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った顔でわたわたと口を開けたり閉じたりするアンリエッタに、士郎がぼそりと呟く。
「ッッ! ち、ちがっ! っぅう……その……すみません」
怯えたように赤く染まった顔を伏せて震えるアンリエッタに、士郎はジト目を悪戯っぽいものに変え、肩を竦めてみせた。
「で、結局アンは覚えているのか」
「ッッ! は、ハイッ!! も、もちろん覚えていますッ!! …………忘れるはずが……ありません。しかし、今のわたくしにあの誓いを受ける資か―――」
士郎の言葉に勢いよく顔を上げたアンリエッタだが、直ぐに肩を落として顔を下げ、悲しげに震える声を口にしたが、
「だったら、いい。誓いは守る」
士郎の真剣な声がそれを遮り、
「お願いはちゃんと聞いてやっただろ。なら、今度はちゃんと信じてくれるよな」
ふっと、優しく微笑んだ。
士郎とアンリエッタがベランダに移動したころ、ホールの入口に立つ衛士の一人が、ローブを深く被った女性を目に止めた。
女性の背格好からして生徒には見えず、女性の教師にしても、ローブから覗く黒髪を持った者はいない。衛士は手に持った槍を握り直すと、近づいてくる女性に声をかけた。
「すみませんが、何か御用でしょうか?」
「あら失礼。こちらで開かれている舞踏会に用がありまして」
「用? 出席者でしょうか? 招待状か御名をいただけれ―――」
衛士は油断なく女性を見つめる。衛士の視線を受けながら、女性は懐から小さな鐘を取り出すと目の前に掲げた。
「ん? 鐘? いや、まて、それはまさかっ!?」
女性が掲げた鐘を、よく見ようと細めた目で見つめていた衛士の目が見開かられる。
衛士には女性が掲げた鐘に覚えがあった。以前宝物庫の警備をしていた際、偶然目にしたそれは―――。
「眠りのか……ね……」
槍を女性に向けようとしたところで、衛士は力尽きたように前のめりに倒れた。
辺りに透き通った音が響く中、女性は鐘を振る手を止めると、倒れ伏し寝息を立てる衛士に近付いていく。衛士が完全に眠りに落ちていることを確かめた女は、歩を進ませカーテンをくぐる。カーテンをくぐった先には、魔法の明かりに照らし出された大きな鏡の姿があった。
女は大きな鏡―――『真実の鏡』の前に立つと、目を閉じそっとそれに触れる。
魔法の明かりに満ちた中に、女性が被るフードの奥から新たな光が漏れ出すとともに、目の前の『真実の鏡』も光りだす。
女性は口元を釣り上げると、ゆっくりと目を開き、
「さあ、わたし達の舞踏会を始めましょうか」
ぼそりと呟いた。
「あれ? おかしいわね。まだ舞踏会は終わっていない筈なんだけど」
目の前で一斉に人が姿
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