第九章 双月の舞踏会
第七話 スレイプニィルの舞踏会
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に。
「急がなくてもいい。まだ、始まったばかりだろ」
胸元に抱き寄せた頭を撫でる。
優しく……優しく……。
「出来ないことが多くても当たり前だ、結果が出なくても仕方がない、それに、アンは綺麗だからな、やっかみもしょうがない」
ギュッと、胸を掴む手に力が入ったのを感じた。
応えるように、ポンッと、頭を軽く叩く。
「それでも不安なら、周りに助けを求めたらいい」
ゆっくりと、優しくアンリエッタを胸元から離す。肩に置いた手をゆっくりと伸ばし終えると、俯いたアンリエッタの頬に微かに残る涙の後を指先で拭う。
「言っただろ。この世界の月のようにってな。夜を照らしているのは、月だけじゃない。小さな星の一つ一つが夜の闇を照らし出している」
顎に当てた指をそっと持ち上げ、アンリエッタの顔を上げる。
「そんな星に覚えはないか?」
士郎の視線とアンリエッタの視線が交わるが、直ぐに顔を逸らされてしまう。
「……なくは……ない……です」
士郎の言葉を受け、アンリエッタの頭を過ぎったのは、自分を王と認め支え、助けてくれる人たちのこと。
枢機卿のマザリーニや銃士隊のアニエスの他にも……最近力を貸してくれる人が増えてきた。流石に、純粋な好意で自分を助けてくれているとは考えてはいないが、それでも……わたくしのために力を貸してくれている。
だけど……
「……では……あなたは……なん、ですか?」
士郎の胸元を握り締め、アンリエッタは潤んだ瞳で見つめてくる。
「シロウさんは……この夜空に輝く星の……一つ……なのですか」
縋るように切ない声を上げるアンリエッタは、士郎の身体に回した腕に力を込める。
まるで万力で締め付けるかのような力強さは、アンリエッタの不安を表しているようであった。
「それは……俺が決めることではないな」
身体に回されたアンリエッタの腕の力は、息苦しさを感じる程だが、士郎は全くそんな様子を見せずに優しい笑みを浮かべたまま。
「あの……それは……」
どういうことですか? と続く言葉を、
「アンは忘れたのか? 俺の誓いを……」
士郎は口を開くことで止めた。
「ちか……い……?」
その言葉の意味が一瞬分からずアンリエッタの顔に疑問が過ぎるが、次の瞬間。
「ッッ!!」
ボンッ! と音を立ててアンリエッタの顔が真っ赤に染まった。
「あ、あのっ! そのっ! そ、それはっ! ッ! ッッ」
脳裏に蘇るのは、雨が降る中、トリスタニアの安宿で士郎と過ごしたあの夜のこと。
まるで獣のように唇を求めあった時間を……。
「……何か別の事を思い出していないか……」
真っ赤に染ま
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