第九章 双月の舞踏会
第七話 スレイプニィルの舞踏会
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た二人だったが、最初に口火を切ったのは士郎だった。恥ずかしげに顔を伏せたルイズの姿のアンリエッタに士郎は笑いながら話しかける。
「そう、ですね。楽しませていただいています」
「ふむ、だがそう言う割には、あまり元気がないな。この前から調子が良くなさそうだったが、本当に大丈夫か?」
ルイズに変身したアンリエッタの身長に合わせるように、士郎が膝を曲げる。
「……心配していただいてありがとうございます。でも、本当に大丈夫ですよ。わたくしは―――」
「ほれ」
「だいふょ、ってなにひゅるんへすか?」
士郎の視線を真っ直ぐに受け止めアンリエッタは優しく微笑む。しかし、士郎はそんなアンリエッタの頬を両手で左右にうにょんと引っ張り、浮かんだ笑みを崩した。
突然の士郎の行動に、アンリエッタは顔を白黒させながら、微かに赤くなった頬を両手で押さえ戸惑った声を上げる。
「何処が大丈夫だ。分からないとでも思っているのか」
「……すみません」
士郎は何処か非難するような視線をアンリエッタに向ける。士郎の視線を受けたアンリエッタは一瞬目を見開いた後、目を伏せた。
「あ、と、その、責めているわけじゃないんだ。だから、そんなに落ち込むな」
「え、あ、はい」
顔を伏せたアンリエッタの様子に慌てた士郎が、慌てて肩を掴み声を上げる。アンリエッタは士郎の慌てた様子に一瞬目を丸くすると、今度はくすっと小さな笑みを浮かべた。
「シロウさんには、分かってしまうんですね」
「まあ、無理しているのは分かるな」
士郎の声を聞きながら、身体をくるりと回しアンリエッタは空を見上げる。空には二つの月と無数の星が眩く輝いていた。あまりの輝きに眩んだかのように、星を見上げる目を細めたアンリエッタは、士郎に背を向けた格好で独り言を呟くように口を開らく。
「確かに、最近仕事が忙しくて休む暇がなくて疲れが溜まっているようです……と言って信じてくれますか?」
「疲れが溜まっているのは確かなようだが……それだけじゃないだろ」
士郎の言葉を受け、ゆっくりと振り向くアンリエッタ。
ルイズに変身したアンリエッタのはしばみ色の瞳が、星の輝きを受けきらきらと光っている。しかし、その輝きの奥、瞳の奥に、士郎は粘りつくような疲労を見た。
それは身体のではなく、心の疲労。
理由は……予想はつく。
「なあ……アンはルイズが羨ましいのか?」
「……そう、ですね。わたくしは、あの子が羨ましい……何にも縛られず、自由に、思うがまま振る舞う……わたくしとは全く違う……あの子が……」
ぽつりぽつりと呟くように話しながら、アンリエッタは夜空に手を伸ばす。空の果て、決して届かない遥か天空に輝く星を掴むかのように。
「あ
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