アインクラッド 後編
極夜の入り口
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ね上げた。筋力値を全く上げていないマサキに抗えるはずもなく、蒼風はマサキの右手ごと打ち上げられ、纏っていた閃光は無残に掻き消える。いつものポーカーフェイスの代わりにマサキの顔面に張り付いた驚愕の表情を見て、キリトは勝利を確信しつつ剣先をマサキに向ける。
――だが、しかし。
「……正直、驚いたよ。まさか見えない攻撃にまで反応されるとはな。だが……」
キリトが向けた刃がマサキの体を今まさに切り裂こうとした、その瞬間。刃が触れていないにも関わらず、マサキの体が青白いポリゴンへと変化し、そして消えた。次いで、状況が把握できぬまま何もなくなった空間を切り刻むキリトの背後から、何者かの――否、間違えようもない、マサキの声。硬直を消す風刀スキル《夕凪》と瞬間転移技《瞬風》のコンボ。
「――生憎、保険は多くかけておく主義でね」
冷たく掠れたように響いた声に続いて背後から襲い来る半透明の刃が、キリトの体を切り裂いた。マサキが振るう蒼風は、状況が飲み込めないキリトの無防備な背中を流れるように滑っていく。
「……終わりだ」
《刃風》の三連撃のうち二撃を難なくキリトに当てたマサキは、短く、か細く呟くと、二撃目で跳ね上げた蒼風を静かに振り下ろした。
言葉を失って斃れゆく身体、何も残さずに散りゆく空色の欠片。何も特別な部分などありはしない、ありふれた無機質な死。もう見飽きた、しかし見慣れることのないいつも通りの非日常。
まるでコンピュータ内のデータを消すようなあっけない“消去”の光景を思い浮かび、マサキの右手が僅かに強張った。その効果で、振り下ろされる剣速が仄かに鈍る。
そして、幸か不幸か、その一瞬の差が命運を分けた。キリトの身体に刃が触れる寸前、真紅の盾が間に差し込まれ、強烈な火花と金属音とを散らした。
「……何のつもりだ」
「決着は着いただろう。これ以上、互いに傷つけあう必要もあるまい」
今度こそ硬直をまともに受けたマサキに、盾でキリトをガードしたヒースクリフは張り付いた能面のようなポーカーフェイスで答えた。ほんの数ドットをHPバーに残したキリトが、雪の上に膝からくずおれる。
マサキは無言でそれを一瞥すると、硬直が解かれた後に蒼風を鞘にしまった。二人に背を向け、記憶の片隅から引っ張り出した《還魂の聖晶石》の座標に向かう。
「え……?」
マサキが雪の中から虹色に光る結晶を掘り起こしたとき、ワープポイントからエミとクラインが現れた。マサキのカーソルがオレンジになっていることに気付いたのだろう、愛らしい顔が困惑と驚愕に凍りつく。
「マサキ……手前ェまさか……!」
「安心しろ、死んじゃいない。……ほら、そこに倒
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