アインクラッド 後編
極夜の入り口
[4/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
て、キリトの視界が再びマサキを捉えようとしたその瞬間。突如二本目の投剣から煙が噴出した。投剣スキル《スモーク》によって吐き出された白い煙は、たちまちキリトの視界を呑み込んでいく。
キリトは反射的に《索敵》スキルを使用したが、《スモーク》の煙は目での索敵だけでなく索敵スキルも無効化してしまうことを思い出して諦めた。ならばと足音での探知を試みるが、鼓膜を揺らすのは焦りで大きくなった自らの鼓動と息遣いのみ。それもそのはず、マサキはこの時既に、足音を消す《軽業》スキル派生スキルMod《サイレント・ラン》を取得していたのだ。
「っ……!」
僅かな逡巡を振り払うと、キリトは一か八か、全力で足元の雪を蹴り飛ばした。《スモーク》の煙の中にいる以上マサキの位置を知ることは叶わないが、同時にマサキもキリトが今の場所に留まっていない限り位置を特定できない。ならば、奇襲を受ける前に煙から抜け出して状況をイーブンに戻す。
《スモーク》の効果範囲はそれほど広くなく、キリトは数秒程度のスプリントで難なく煙から抜け出した。即座に《索敵》スキルを発動させてマサキを探す。が、スキル自体は何の問題もなく作動しているにも関わらず、マサキの居所を指し示すカーソルは一向に姿を現さない。
「……まさか」
キリトははっと何かに気付くと、急に首を左右に振り出した。曖昧な記憶を頼りに、雪原に落ちているはずのものを探す。
幸い、目当てのもの――蘇生アイテム――はすぐに見つかった。自分が煙に巻かれている間に持ち逃げされたのではと一瞬疑ったキリトだったが、杞憂に終わったらしい。
「ふぅ……?」
虹色の光を放つ結晶を見つけ、一瞬気が緩みかけたキリトの神経を、不意に何者かが駆け抜けた。違和感と呼ぶには微細すぎる、だが何かの間違いだと決め付けるには大きすぎる不快感。
まるで、見えない刃に狙われているような……。
「…………ッ!」
肥大化した違和感に耐えかね、ついにキリトが振り返った。疑念の声を上げる理性とは裏腹に感覚は再び加速し、研ぎ澄まされていく。
振り返った先にあったのは、何の変哲もない雪景色。だが、喉の辺りを射抜く不快感は執拗に何かを訴えかける。
どうせ、何をしたところで意味なんてない――そんな、ある種の諦念を抱いたキリトが、右手の剣を振り上げて――。
「…………!」
「なっ……!?」
刃がぶつかり合う派手な音が空気を震わせ、瞬間、何もなかったはずの空間に突如マサキの体が浮かび上がった。《ブラストウイングコート》に秘められた、一日に一度だけ自らの姿を消すことができる特殊能力。
キリトは予想だにしていなかった現象に体が硬直しそうになるが、手に握った剣にぐっと力を入れ直し、ぶつかり合っている空気の刃を跳
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ