アインクラッド 後編
極夜の入り口
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ちらと向こうのHPのどちらが先になくなるか。それだけなのだから。
残響を引いて平野にたなびく咆哮の中で、キリトは血色の閃光をマサキへと向けた。
「チッ……」
なけなしの筋力値で跳び退さりながら、マサキは舌打ちした。わき腹を貫いた《ヴォーパルストライク》の血色の剣閃が、文字通り防御力の存在しないHPを食い散らかしていく。攻略組でもトップクラスの攻撃専門職たるキリトの捨て身の一撃に晒されたマサキのHPは、レッドゾーンもレッドゾーン、バーの左端にたった一粒のドットを残して消え去った。そして、もうポーション等回復アイテムは一つたりとも残っていない。
「ハァ……」
そんな絶望的な状況にも関わらず、マサキは一つ溜息を吐いただけだった。まだ余裕だとでも言いたげに頭を掻くマサキに、キリトが若干憮然としつつ問いかける。
「……随分、余裕そうだな」
「いや、そうでもないさ。見れば分かるだろ?」
言葉とは裏腹に全く焦りのない声色で答えると、マサキは一ドットのみが残った自分のHPバーを指差した。Yシャツとスラックスとは何度見ても似合わない日本刀を構えなおす。
「まあ……」
そして、次の瞬間。
「――負ける気もないがな」
マサキは構えなおした蒼風を真一文字に薙ぎ払い、その空気の刃を射出した。弧状に広がる半透明の刃が空色の光を纏いながら駆け抜け、キリトに肉薄する。
「くっ!」
咄嗟のことで一瞬反応が遅れたキリトだったが、持ち前の反応速度で右にダイブ。刀身を飛ばして遠距離攻撃を行う風刀スキル技《鎌鼬》をかわす。
地に這い蹲りながらも追撃を警戒してマサキの方を見ると、そこには光の尾を引きながら彗星のように迫る一本の投剣が。
「せ……やぁっ!」
膝立ちまで体勢を立て直したキリトは、ちょうど顔面の高さで接近してくる投剣を剣で弾き飛ばした。そのままマサキに攻撃を仕掛けようと、雪原に力強く一歩を踏み出す。
だが。
「――ッ!?」
投げられた投剣の死角に隠れていた二本目を目の当たりにして、キリトは目を見開いた。距離からして迎撃は不可能。投剣である以上ダメージ自体はそれほどでもないが、麻痺毒でも塗られていた場合はそこで詰んでしまう。一本目の投剣の死角に二本目を隠して投げつける投剣スキル派生スキルMod《ブラインド》をここで使用してきたマサキに、心の中で毒づく。
――だが、これくらい――!
脳神経が灼けつき、時間が凍結する。そんな、ある意味矛盾した感覚を味わいながらキリトは凄まじい反応速度で体ごと首を捻り、スレスレで投剣を回避した。右手の剣を握り締め、反撃の牙をマサキへ向けようとする。
そし
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