第一幕その一
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「お嬢様」
ところがここでマグダレーネが帰って来るのだった。
「ネッカチーフを見つけてきました」
「あら、嫌だわ」
しかし少女はここでまたわざとらしく言う。
「留金が」
「落とされたのですね」
「御免なさい」
髪からそっと取り出して懐の中に入れながら応える少女だった。
「だから」
「わかりましたわ。それでは」
マグダレーネはこの時も見ていたがやはり何も見ないことにして席の方に言った。こうして二人はまた見詰め合うことになるのだった。
「光や喜びか」
若者はまた思い詰めた顔で語る。
「それとも闇や墓場か。それを知りたいのです」
「留金は・・・・・・あら、いけないわ」
マグダレーネは今度は自分から引き返す。
「今度は私が聖書を忘れてしまったわ。それでは」
「その一言をです」
わざと姿を消すマグダレーネをそのままに彼は言うのだった。
「私の運命を決める一言をです」
「貴方のですか」
「そうです。はいかいいえか」
言葉はさらに思い詰めたものになっていく。
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