第15局
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匠?」
「そうか!プロだ、プロなんだ!」
師匠と呼ばれた男性は、何かに気がついたように声を上げた。
「アハハ!そうだそうだ。インターネットは顔も名もわからないから、アジアのプロが時々おふざけでアマチュアに混じって打つというのを聞いたことがある。」
「プロ?」
「負けたんですか?」
「大敗だよ。あまりの強さにボクの心臓は破裂しそうだった。ヒドイよ。」
男性は苦笑しながら少年たちに答えた。
「あ、リストから名前が消えた。」
「どこの国の人なんですか?日本?」
「ほんとにプロなのかな。」
―初めて見る名だった…。ネット仲間に聞いても誰も知るまいな、この……、saiが何者か…。
― 日本 ―
和谷は、自室のパソコンでネット碁を打っていた。
和谷義高、院生として囲碁を学んでいる、この春中学二年にあがる少年だ。
パソコンの画面を前に、マウスを握る手は苦しげだった。
―…こいつ、強い。なんだよ、この強さ。クソッ、もう無理か…。
局面はまだ中盤だったが、和谷は投了した。
院生はアマチュアとはいえプロの予備軍。
その上位クラスともなれば、アマチュアではトップレベルの腕となる。
したがって、形勢判断が早く、かつ正確になり、また相手の力量も読み取れる。
和谷は相手の力量を知り、これ以上は無理だと判断した。
力のない者ほどこうした判断ができず、もう勝てない碁をいつまでも打ち続けることとなる。
さすがは院生の実力といえた。
「saiか…、いったい誰だ?」
対局相手だったsaiは、次の相手と打ち始めていた。
自然とその対局を眺めていた和谷だったが、いつしか身を乗り出して真剣に注目していた。
「相手も強い…。少なくとも俺よりは上か…。ネット碁でここまでの対局なんてそうは見ないんだけどな…。」
対局はsaiが優勢のまま続き、終盤で相手が投了した。
「こいつも強いな。伊角さんくらいはあるか?でも、伊角さんはネット碁やってないっていってたしな…。まあ、強い面子が増えるのはありがたいって言えばありがたいんだけど…、akaか…。」
その後も、saiは頻繁にネット碁に現れた。
基本的に相手を選ばないようで、様々な相手と打っていた。
そして、いずれの相手にも勝っていた。
突然現れた、無敗の打ち手。
ネット碁の中でも次第に注目を浴びていき、日に日に観戦者の数は増えていく。
観戦者が増えるに連れ、saiへの対局申し込みも増え、自然とsaiとの対局は難しくなっていった。
当初、その強さから、プロだろうと噂されていたsai。
だが、プロにしてはあまりにネット碁に現れる頻度が高い。
素人相手にここまで頻繁にプロが打つ
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