外伝その1 薔薇園にて
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集められれば……」
本気かな、親っさん。
「経済での交流だけじゃなく人の交流も図れるかもしれない。平和が来たと実感できるかも……」
「ですが、人が来るでしょうか?」
ヴァイトリングが恐る恐る問い掛けた。そうだよな、そんな簡単に人が来るのかな?
「そうですね、……新婚旅行の場所として宣伝しましょうか」
「新婚旅行?」
皆で声に出してしまったよ。でも親っさんは全然気にする様子も無い。楽しそうに笑みを浮かべている。
「立派なリゾートホテルを建てれば結構来るでしょう、女性は宿泊場所には煩いですからね。そしてホテルを起点に色んな場所を観光してもらう。イゼルローン回廊まで船を出して観光させても良い。我々の艦の残骸の整理作業を見て貰いそれからイゼルローン要塞を外から見て貰う。肉眼で要塞を見られるんです、結構人気が出ると思いますよ。イゼルローン要塞をバックに記念写真を取るのも良いでしょう。それに我々の仕事を知ってもらう事にもなる。うん、観光ビジネスか、平和になったのだから悪くないですね」
はあ、なるほどなあ。案外って言ったら失礼だけど上手く行くかもしれないな。俺もアンナに黒姫一家の仕事の現場を見て貰えたら嬉しい。イゼルローン要塞か、あれを奪回したのも黒姫一家だ、俺は参加していないが作戦の説明ぐらいは出来るな。うん、良いかもしれない。皆も楽しそうな顔をしている、上手く行くと思ってるんだろう。
そのまま皆で薔薇を見ながらホテルはどんなホテルが良いかとか遊園地だったら乗り物は何が欲しいかとかで盛り上がっているとヴェーネルトが訝しげな声を上げた。
「親っさん、こっちに人が来ます。四人、いや五人かな、敵意は無いようですが」
俺達も入口の方を見た。確かに人が来る。ゆっくりと無造作に歩いてくるからヴェーネルトの言う通り敵意は無さそうだ。新無憂宮の中だし問題は無いと思うが油断は出来ない、じっと眼を凝らして近付いてくる連中を見た。
「心配は要りません、あれはエル・ファシル公爵とその取り巻きでしょう」
答えを出したのは親っさんだった。なるほど、確かに先頭に居る若い黒髪の男はエル・ファシル公爵、ヤン・ウェンリーだ。軍人としては有名な男だけど意外に優男だな。ちょっと親っさんに似ているところが有る。近づいてきたエル・ファシル公爵に親っさんが声をかけた。
「美しい薔薇園ですね、公爵閣下」
「……」
おいおい、なんで親っさんを睨んでるんだよ、公爵閣下。親っさんは知らぬ振りで薔薇の花を見ている。
「君は私を騙したな」
公爵が低い声で話しかけた。拙い、こいつは怒っているぜ。それにしても騙した? 親っさん、何したんだろう。皆も困惑した様な表情をしている。親っさんが薔薇の花から公爵へと視線を移した。拙いよ、親っさん、ニコニコしている。
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